2021 Fiscal Year Research-status Report
Re-examining Mori Ogai's Perspectives on "Languages" from Plurilingualism
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20K00319
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
河野 至恩 上智大学, 国際教養学部, 准教授 (60439338)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 森鴎外 / 複言語主義と文学 / 複言語主義 / 日本近代文学 / 日本語文学 / 言語哲学と文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、森鴎外の文学作品・翻訳・評論などのテクストやその基盤にある文芸思想 における「言語」をめぐる諸問題を、個人が複数の言語に習熟できるという前提に立つ 「複言語主義」から再検討する試みである。明治・大正期の代表的な作家である鴎外のテクストや思想と「言語」の関係を多角的に分析することにより、明治・大正期文学の言語環境の理解を深め、文学と「言語」の関係 を批判的に再検討することで「複数言語から読む日本近現代文学」の問題系のさらなる展開を目指す。 研究の2年目である2021年度も、海外への渡航制限等のため、海外における調査・研究発表を実施することはできなかった。そのような状況のなか、以前から研究を進めていた、「鴎外の思想における複数の言語・文化と「言語のあいだ」」についての研究を進めた。また、英語圏、ドイツ語圏における複言語主義と文学に関する研究動向について、調査を継続した。 研究成果として、論文(英文)、"Superstition at a Crossroads: Mori Ogai’s Short Stories of Supernatural Phenomena During the Late Meiji Period" をドイツ・ケルン大学日本学科編集による論文集 _Crossing the Borders to Modernity_ (Harrassowitz, 2022) の一章として刊行した。この論文は、鴎外の明治後期の小説(「金比羅」「妄想」など)における迷信の表象を通して、鴎外が複数の文脈を往還しながら、それぞれの文脈を相対化する方法について探ったものである。 また、国内外の研究協力者と連絡を継続的に取り、2022年度に研究発表や調査が実施できるよう準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、新型コロナウィルスの感染拡大による渡航規制等のため、海外における調査・研究発表を全く行うことができなかった。また、国内外の図書館・資料館の閉館の影響もあり、資料の収集にも影響が出ている。 そのような制約の中、トピックの5)鴎外の思想における複数の言語・文化と「言語のあいだ」に関して、鴎外の明治後期の小説(「金比羅」「妄想」など)における迷信の表象を通して、鴎外が「日本/西洋」「前近代/近代」の対立項を意識しつつ、複数の文脈を往還することによってそれぞれの文脈を相対化する方法について探る論文(英文)の執筆を進め、ケルン大学日本学科編集による論文集 _Crossing the Borders to Modernity_ (Harrassowitz, 2022) の一章として刊行した。 それと平行して、英語圏やドイツ語圏における複言語主義と文学に関する研究動向について、調査を継続している。 また、今後の研究発表・共同研究の可能性を探るため、国内外の研究者とメールなどで連絡を取りながら、準備と計画を進めている。2022年には研究成果発表の場を設定できるよう、準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も、研究テーマ、トピックについては大きな変更はない。 2022年度は、渡航制限等の制約が緩和されることが見込まれ、海外における調査を計画・実施したいと考えている。そのための準備を進めている。また、デジタル資料の活用なども並行して行う予定である。 研究成果の発表については、国内外で研究発表が実現できるよう、研究協力者と連絡を取りつつ進めている。また、研究発表の内容は、論文として公刊できるよう、準備を進めていく見込みである。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度は新型コロナウイスル感染の拡大による海外渡航制限等のため、予定していた海外調査・研究発表等を実施することができなかった。2022年度には海外調査・研究発表等を実施できるよう、現在計画を進めているところである。学会への参加、あるいは海外での研究集会の実施を検討しており、次年度使用額から支出する計画である。 また、以上の理由で調査計画に遅れが生じているため、成果発表の計画も変更せざるを得なくなっている。次年度使用額から、研究成果のための費用も支出することを計画している。
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[Book] Crossing the Borders to Modernity: Fictional Characters as Representations of Alternative Concepts of Life in Meiji Literature (1868-1912)2022
Author(s)
Stephan Koehn, Chantal Weber, Shion Kono, Toshiaki Kobayashi, Timothy J. Van Compernolle, Indra Levy, Matthew Koenigsberg, Massimiliano Tomasi, Gala Maria Follaco, Kinji Yamamoto, Makoto Goi, Martin Thomas, Frank Jacob, Hiroshi Takita, Martha-Christine Menzel, Yoshitaka Hibi, Ingrid Fritsch
Total Pages
356
Publisher
Harrassowitz Verlag
ISBN
978-3-447-11803-3