2021 Fiscal Year Research-status Report
谷崎源氏成立過程に関する基盤的研究―〈新訳〉に焦点をあてて―
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20K00327
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
大津 直子 同志社女子大学, 表象文化学部, 准教授 (40551031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 谷崎源氏 / 文体 / 敬語 / 国文学 / 最高敬語 / 岡崎義恵 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は申請時の研究計画に掲げた「敬語に関する進言の調査」を実施し、下記の実績を公開した。 (1)「国文学者と時局―谷崎源氏の改訳から見る、戦中戦後の天皇表象と最高敬語―」(「同志社女子大学総合文化研究所紀要」第38巻 2021/07/29) 【要旨】「桐壺」巻の帝が更衣の局に頻繁に渡御する描写は、国粋主義が台頭した戦時下では更衣の動作として解釈されていた。天皇の威厳を欠くものとして問題視されたためである。國學院大學蔵『潤一郎新訳 源氏物語』草稿には、戦後も帝の動作とする解釈を強く否定する山田孝雄の校閲が残っている。最高敬語という学術的根拠を看過してまで戦前の解釈を貫く姿勢の根底には、戦中戦後とで一転した天皇表象の問題があることを指摘し、当時の国文学界の動向についても考察した。 (2)「『潤一郎訳 源氏物語』(旧訳)の特質 ―岡崎義恵「谷崎源氏論」からの一考察―」(「同志社女子大学 学術研究年報」第72巻 2022/01/07) 【要旨】昭和一四年(一九三九)五月、四日に亘り「東京朝日新聞」に掲載された、東北帝国大学教授岡崎義恵による「谷崎源氏論」を通して、戦前と戦後で大きく変容する谷崎源氏の本性を論じた。従来、同評論は、藤壺にまつわる箇所を削除したことを糾弾した点にばかり焦点が当てられてきた。本論は評論全体の精読、並びに戦時下の国文学界に関する考察を通して、訳文の長短を極めて正確にとらえたものであり、戦後の改訳にも大きな影響を与えたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は申請時の研究計画に掲げた「敬語に関する進言の調査」を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響下で本年度も所蔵先への調査や共同研究は実施できなかった。しかしながら、一方で収集済みの画像の精査を進めることが出来た。本研究が軸足を置く玉上琢彌の関与の実態についての解明が進み、二本の論文の形で実績報告を行った。今後は社会情勢を見極めながら原資料の調査、共同研究を再開したい。
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Causes of Carryover |
本年度は所属機関への調査の許可が下りず、海外の研究者らとの共同研究もかなわなかった。次年度いずれも実施し、旅費、人件費に充てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)