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2021 Fiscal Year Research-status Report

「嵯峨本願寺資料」に関する総合的研究

Research Project

Project/Area Number 20K00354
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

川崎 佐知子  立命館大学, 文学部, 教授 (00536120)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords東本願寺 / 大谷家 / 渉成園 / 偶仙楼 / 歌仙 / 近衞家凞 / 渡辺始興
Outline of Annual Research Achievements

令和3年度は、「嵯峨本願寺資料」と禁裏・公家文庫との関係を解明することを重点研究テーマとし、実験調査と情報収集、資料内容の分析・検討、研究成果の公表をおこなった。令和2年度に続き、宗教法人本願寺(京都市右京区)において「嵯峨本願寺資料」の調査閲覧を実施した。調査を実施した日は、令和3年4月27日、5月26日、6月28日、7月20日、9月6日、10月15日、12月1日であった。渉成園に関する和歌・絵画資料、後陽成院・後西院・後桜町院など宸翰の和歌・文学資料を中心に、書誌などの基本的事項を確認し、本文や伝来の経緯などを検証した。これら調査の結果を基礎とした研究成果のひとつ、川崎佐知子「渉成園の偶仙楼をめぐって」(中古文学会関西部会第五十八回例会、2021年6月12日、オンライン開催、開催協力校;京都女子大学〔京都市東山区〕)では、「嵯峨本願寺資料」の近衞家凞筆・渡辺始興画『和漢六歌仙板額』十二枚を取り上げた。十二枚は、東本願寺の別業渉成園にかつて存した偶仙楼に飾られていた板額である。のちに頼山陽の「渉成園十三景」にも撰ばれた偶仙楼という建物を象徴する器物であった。和漢それぞれ歌仙の和歌と漢詩および歌仙絵を検討した結果、『和漢六歌仙板額』には同時代の歌仙・詩仙の先行作品にない独自性の認められることがわかった。その製作の主は近衞家凞であり、近衞家凞によって東本願寺門跡へもたらされたことが重要である。従来、東本願寺は、徳川幕府との関わりが深いと指摘されていた。しかし、近世中期以降は、門主が近衞家猶子となって元服するなど、近衞関白家との関係を強めているようである。『和漢六歌仙板額』はその典型例といえるのではないか。「嵯峨本願寺資料」に、東本願寺と近衞関白家のつながりの反映されている可能性を見いだせたことが、令和3年度における研究の最大の意義である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和3年度は、関係諸機関より多大なる協力を得て、研究計画の段階で想定していたペースを保ちつつ、資料調査を実施することができている。また、令和3年度の研究によって、本研究課題の主たる研究対象である「嵯峨本願寺資料」に、近世中期以降の東本願寺と近衞家との関係性を映し出されていることも判明した。これは資料群の本質にせまるような発見であると考える。この発見により、次年度の研究への基礎を固め、着実に研究を発展させることができるように思う。
いっぽうで、コロナ禍が思いのほか長引いており、研究遂行にも深刻な影響を受けていると言わざるを得ない状況にある。遠方にある諸機関へ調査のために出向くことや最新の研究動向をうかがうための学会に参加することのままならない状態が続いている。令和2年度に発表を予定していた国際学会も、学会自体が一年遅れの開催となり、結局オンラインによる参加、発表となってしまった。今後状況が好転することを期待しつつ、今しばらくは、資料閲覧に関しては、Webで公開されている資料データベースを適宜活用するようにする。オンラインによる学会参加なども継続する。適切な手続きを経て、原本の写真撮影や紙焼き写真などの複写物を作成し、調査研究に利用することも視野に入れる。

Strategy for Future Research Activity

令和4年度は、本研究課題の研究完成年度にあたることを十分に意識し、当初計画していたとおり、「近世東本願寺文化圏に関する総合的研究」を重点研究テーマに設定する。令和2年度・令和3年度の実績を踏まえ、東本願寺を近世京都の文学史・文化史に位置づけることを目標とする。研究計画の段階では、東本願寺の文学的活動を特色づける『渉成園十三詠詩』の検討を予定していた。しかし、東本願寺門主と公家との関係を掘り下げる必要を感じるようになったことから、「嵯峨本願寺資料」の『源氏物語』を主たる考察材料とすることを課題としたい。これまでと同様、詳細な資料調査をおこなう。調査機関は宗教法人本願寺(京都市右京区)で、月1回を予定している。そのほか、宮内庁書陵部(東京都千代田区)、天理大学附属天理図書館(奈良県天理市)などの諸機関での資料調査もおこなう。実施時期は令和4年9月、令和5年3月の予定である。最新の研究動向を探り、研究成果を公表するために、中古文学会(東京など、令和4年5月・令和4年10月開催予定)などに参加する予定である。
これまでの実績を総括し、一定以上の成果を出すことを第一に考える。さらに研究の深化をめざし、より普遍的で発展的な結果を出せるよう努力する所存である。

Causes of Carryover

長らく続くコロナ禍の影響で、令和2年度・令和3年度に予定していた資料調査・学会参加のための出張をすべて取りやめることとなった。とくに、令和2年度の国際学会(第16回欧州日本学会国際会議、開催地ベルギー)がいったん延期となり、令和3年度にあらためてZOOMによるオンライン開催(2021年8月24日から同28日まで、開催地ドイツ)となったことで、大きな次年度使用額が生じてしまった。令和4年度は、これまで控えていた遠方への資料調査や学会参加を再開するつもりである。資料調査は、宮内庁書陵部(東京都千代田区)などを予定している。また、中古文学会(東京など、令和4年5月・令和4年10月開催予定)などの学会への参加を予定している。翌年度分として請求した助成金と合わせた金額を、これらの出張のために使用する計画である。そのほか、資料収集の目的で紙焼写真や画像データの作成する費用として、あるいは研究に活用する学術的資料や学術図書を購入する費用としても使用する計画である。

  • Research Products

    (6 results)

All 2022 2021

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 3 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 翻刻『別本 御書物方年譜覚書』(其の二)2022

    • Author(s)
      川崎佐知子・芳村弘道・中本大
    • Journal Title

      立命館白川静記念東洋文字文化研究所紀要

      Volume: 15 Pages: 79-94

    • Open Access
  • [Journal Article] 大徳寺芳春院と近衞家2022

    • Author(s)
      川崎佐知子
    • Journal Title

      立命館白川静記念東洋文字文化研究所紀要

      Volume: 15 Pages: 35-49

    • Open Access
  • [Journal Article] 立命館大学図書館蔵『詠百首和歌』について2021

    • Author(s)
      川崎佐知子
    • Journal Title

      論究日本文学

      Volume: 114 Pages: 1ー11

    • Open Access
  • [Presentation] 渉成園の偶仙楼をめぐって2021

    • Author(s)
      川崎佐知子
    • Organizer
      中古文学会関西部会第五十八回例会
  • [Presentation] 村田春海による『狭衣物語』研究2021

    • Author(s)
      川崎佐知子
    • Organizer
      第十六回欧州日本学会国際会議
    • Int'l Joint Research
  • [Book] 応円満院殿御詠歌―近衞基凞の家集―2022

    • Author(s)
      川崎佐知子
    • Total Pages
      700
    • Publisher
      古典ライブラリー
    • ISBN
      9784904470084

URL: 

Published: 2022-12-28  

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