2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 康 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国 / 明末 / 艶文学 / 詩文 / 俗文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国の明末は、何らかの形で女性にまつわる文学、「艶文学」が盛んに行われた時代であった。従来の研究では、『金瓶梅』、馮夢龍の「三言」などの白話小説、王世貞の編とされる『艶異編』、馮夢龍の『情史類略』などの文言小説、湯顕祖の『牡丹亭還魂記』などの戯曲、詩文については、王彦泓のような艶詩人、『青楼韻語』『唐詩艶逸品』などの女性詩集、『呉騒合編』『太霞新奏』などの散曲集、馮夢龍の『掛枝児』『山歌』など男女の恋情を主題とした俗曲集、民間歌謡集などがジャンルごとにばらばらに行われてきた。これらを総合的に扱い、中国明末文学の深層に迫りたいということが、本研究の目的であった。研究の初年度にあたる2020年度、まずは金文京編『漢字を使った文化はどう広がっていたのか 東アジアの漢字漢文文化圏 東アジア文化講座2』(文学通信、2021.3)のなかで担当した「白話」において、明末に盛んに作られるようになった白話小説の文学言語としての白話について、その性格と歴史について明らかにすることによって、雅文学と俗文学の橋渡しをする上での一方での土台を固めた。また、著書『明清江南社会文化史研究』のなかの「明末悪僧小説初探」「明清小説の中の俗曲「西江月」」などにおいて、色欲にもとづく悪僧の犯罪や破戒、また俗曲「西江月」に多く見られる男女の恋歌など、本研究テーマに関わる内容を取り扱い、明末「艶文学」の一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度において、まずは「研究実績の概要」に示したいくつかの論考を発表することができた。また馮夢龍の編とされる散曲集『太霞新奏』に収められる馮夢龍作の散曲作品について、その訳注を作成した。これについては、いずれ発表の予定である。また、明末清初艶文学に関する一つの典型的人物ともいえる姜実節について、その生涯と、書画、詩文、そして妓女との関わりなどを考証し、論文「姜実節の生涯と藝術」を完成し、2021年度中に刊行の予定である。同様に姜実節につき、その父親である姜サイ(土+采)没後の顕彰活動についての論考も完成し、やはり2021年度中に発表の予定である。 しかしながら、2020年度は、コロナウイルスのため、海外、また国内での資料調査がかなわず、またそもそも大学の研究室、あるいは書店に赴くことにも制約が加わり、当初計画していた資料調査がかなわなかったことは残念であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、コロナウイルスの影響により、海外、国内での資料調査がかなわず、これまでに資料を集めていた対象については論文を書くことができたものの、新たな調査に基づく進展を見ることができなかった。依然として制約はあるとはいえ、各地の図書館での閲覧も可能になっており、まずは国内の各図書館、また国内の書店を通しての資料蒐集につとめることにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延、緊急事態宣言発出により、海外、また国内での資料調査が不可能になり、旅費を使うことができなかった。今年度、依然としてウイルスは終熄しているわけではないが、図書館等も制約があるとはいえ、利用可能な状況となり、可能な限り、新たな資料調査を行いたい。また、物品費、主として図書について。これも昨年度は、国際的な本の流通が滞り、また直接書店に赴くことができないなどの不便があり、十分に入手することがかなわなかった。これについて、現在は可能な報告に向かっており、今年度は関連の図書を購入していきたいと思う。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] 白話2021
Author(s)
大木 康
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Journal Title
『漢字を使った文化はどう広がっていたのか 東アジアの漢字漢文文化圏 東アジア文化講座2』
Volume: 2
Pages: 245-254
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