2020 Fiscal Year Research-status Report
日中戦争期の湘西における知識人・高等教育機関の移動と文化的変容の研究
Project/Area Number |
20K00363
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
齊藤 大紀 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (70361938)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今泉 秀人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (00263343)
中野 徹 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (20610512)
中村 みどり 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30434351)
杉村 安幾子 金沢大学, 外国語教育系, 教授 (50334793)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 湘西 / 日中戦争 / 沈従文 / 銭鍾書 / 聞一多 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日中戦争時期の知識人の湖南省西部(以下湘西と略称)への移住とそれによる湘西の社会的、文化的な変容を解明することを目的とするものである。具体的には以下の目的を有する。①湘西という一地方の日中戦争期という一時代に視点をすえて、中国における知識人の大移動の新たな一断面を明らかにすること。②湘西社会の近代化の独自性の解明。③知識人と湘西の地域社会の接触のもとで発生した文化活動、特にさまざまな文学テキストの読解。 以上の目的を達成するために、本研究では、現地での資料調査が必須であることから、2020年6月に大阪で研究会を開催し、各自の研究テーマに従って新聞・雑誌の調査の分担を決定したうえで、9月に湘西での実地調査、資料収集、中国側研究者との研究打ち合わせを行う予定であった。しかしながら、2019年1月以降、新型コロナウィルスが猖獗を極め、海外での資料調査はおろか、国内での資料調査も難しい状況となってしまった。そのような中で研究例会だけは、オンラインでの開催が可能であったため、2020年8月31日に第1回の研究例会を開催し、今年度の資料収集などの活動予定を再確認するとともに、各自の研究テーマについて報告を行った。 その結果をふまえて、研究代表者は、湘西地方の地方志・民族調査資料・雑誌・族譜などを収録した『湘西苗疆珍稀民族史料集成』を購入し、収録された抗日戦争期の資料について初歩的な把握に努めた。また分担者は、各自の研究テーマにしたがって、作家・沈従文と民族学者・石啓貴との比較研究、湘西滞在期の銭基博・銭鍾書父子の活動、西南聯合大学におけるアメリカ留学生の活動などについて研究を進めた。そのうえで2021年3月30日に第2回の研究例会をやはりオンラインで開催し、資料収集状況や研究の進捗状況の報告を行った。また研究代表者は、中国の沈従文研究者とメールで情報交換を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究の進捗状況に関しては、新型コロナウィルス感染症流行の影響があり、湘西での現地調査や中国各地の図書館での資料調査がまったく実施できなかったため、当初の計画よりやや遅れていることが否定できない。また本研究にかかわりの深い湘西における民俗の調査についても、現地の状況を実見することがかなわず、インターネットを通しての調査に止まらざるを得なくなっている。また日本国内での資料調査も、非常事態宣言の発出や図書館の入館制限などがあり、十分に実施できたとは言い難いものになってしまった。しかし、そのような状況にあっても、本研究参加者は、日本国内各図書館所蔵資料の館外貸出、日本国内中国関係書籍専門書店を通した関連資料の購入、インターネットを通じたデジタル化資料の調査収集などを通して、可能なかぎりの資料収集を進めているところである。さらにそれらの収集資料について、初歩的な調査や読解を行っているところである。その成果については、オンラインによる研究例会を2回開催し、本研究参加者間で共通した認識を持てるようにした。また中国の沈従文研究者との交流もオンライン上で行ってきており、今後の本格的な交流の再開を目指して準備を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症流行の影響は、現地での資料調査を根幹とする本研究にとっても甚大であるが、その状況においても可能な限り研究を遂行しなければならない。その方策ついては、2つの方向に分けて考えている。1. 新型コロナウィルス感染症流行の終息を見据えた方策。研究経費うちの旅費申請分を次年度に繰り越すことによって、2021年度以降の中国における実地調査に備えることにする。新型コロナウィルス感染症流行の終息後も、ただちに現地での資料調査を実施しようとしても、日中間の航空機の運航状況などすぐに原状復帰しない可能性があり、航空運賃の高騰なども予想されるため、それに対応した旅費の確保につとめることとする。この場合も、旅費以外の研究費に関しては、実地調査で十分な成果があがるよう日本国内でできる限りの資料の収集に努め、その調査を行う。また研究例会は、国内の移動が可能である場合には対面式で行うが、状況が許さない場合にはオンラインで行い、研究の進捗状況の共有化を図る。2. 2021年度以降も新型コロナウィルス感染症の流行が終息しなかった場合の方策。2020年度に収集した資料の読解を進めるとともに、中国・日本におけるデジタル化資料の状況を把握し、本研究参加者間で情報の共有化を図り、デジタル化資料を利用して最大限の資料調査を行うこととする。この場合には、研究例会も原則オンライン上で行う。 いずれの方策をとった場合も、2021年度以降は、これまでの研究成果の公表にも努めることとする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行によって、当初予定していた湘西をはじめとする中国での資料調査、研究交流を断念せざるをえず、また日本国内における研究例会も同じ理由によってオンラインで行ったため、次年度繰越金が発生した。 翌年度に繰り越した助成金は、新型コロナウィルス感染症の流行が終息した場合、当初の予定通り中国での資料調査、研究交流に使用する。その際には、航空運賃等が高額になることも予想されるので、今年度の助成金を計画的に繰り越すこととした。また国内での資料収集、研究例会が対面で可能になった場合、そのためにも使用する。新型コロナウィルス感染症の流行が終息しなかった場合、国内での図書館館外貸出や書店での購入を通して資料収集を進め、次々年度以降の中国での資料調査、研究交流に備えることとする。
|
Research Products
(9 results)