2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00366
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
好川 聡 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10456816)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 唐代文学 / 中唐 / 韓愈 |
Outline of Annual Research Achievements |
開元天宝の盛唐詩から安禄山の乱後の詩風の大きな変化、そして中唐元和期にどういったさらなる詩の変革が起こるのかを大きなテーマに定め、王維・孟浩然といった安禄山の乱以前の典型的な盛唐の詩や、『韓愈詩訳注』の編集作業を通じた韓愈詩の精読を中心にして、韓愈がどのように既存の文学の枠組みにとらわれずに作品世界を構築していったか研究を進めた。そこには詩という文学形式でどこまで表現が可能なのか、表現の限界への挑戦といった精神が見られる。韓愈の詩風は一般に「険怪」「詰屈」などと称されるがその枠組みに入りきらないものもある。こうした特徴は元和年間に入ってから特に顕著になるものであり、左遷された陽山での体験が大きな影響を与えている。また、韓門弟子の詩作を通じた韓愈詩の特徴、元和年間の気風について比較検討を進めた。例えば盧仝の「月蝕詩」は元和五年冬に実際に起こった月蝕をもとに作った約三〇〇句の雑言古詩であるが、韓愈はその詩を踏まえて「月蝕詩 玉川子(盧仝)の作に效う」を作っている。「效う」―そのスタイルを模擬する―といいつつ、盧仝の冗語を削った、いわば盧仝の詩を添削したものといえ、約一〇〇句につづめて表現も洗練されている。韓愈の詩も長短自在のリズムで従来の枠組みから大きく外れた表現となっているが、盧仝詩との比較を通じて、韓愈が奇抜な語彙、難解な表現をどこまで許容してどこを改めていたかが分かり、従来にない表現を追い求めた韓愈の志向の限界点をうかがうことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に対する大学での対応などで十分な研究時間が確保できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の成果をまとめるとともに韓愈の交友関係を中心に調査、考察をすすめていく。また、韓愈詩訳注第三冊、第四冊の編集作業を通じて韓愈詩をさらに精読していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって出張がなくなり、旅費が計上されなかったため。専門書の購入に使用する。
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Research Products
(1 results)