2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00366
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
好川 聡 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10456816)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 唐代文学 / 中唐 / 韓愈 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度と同様『韓愈詩訳注第三冊』(研文出版)の編集作業にあたり、2021年10月に刊行した。また、引き続いて第四冊の編集にとりかかり、こうした編集作業を通じて韓愈詩の精読を行った。韓愈詩の特徴の一つに諧謔という要素がある。諧謔の詩は陶淵明や杜甫などにも見られるが、その内容は自嘲・自虐を主としていた。韓愈にも「落歯」や「瀧吏」などの自虐の詩があるが、その一方で「孟生詩」、「侯喜に贈る」、「盧仝に寄す」、「石鼎聯句」など、他者を戯画化してからかう詩も色々作っているところにその特徴がある。上記の作品は孟郊、侯喜、盧仝、劉師服といった韓門弟子たちが描かれているが、「鼾睡を嘲る二首」では、仏僧にまで戯画化の対象を広げている。その作品の結構も、例えば「侯喜に贈る」では侯喜と釣りに出かけて失敗した体験談から後半で人生訓が引き出されており、他の詩でも諧謔だけにとどまるものではないが、「鼾睡を嘲る二首」では、仏僧のいびきの様子を面白可笑しく描くことに終始している。この点においても「鼾睡を嘲る二首」は特徴的な詩といえる。 韓愈には自虐・戯画化の詩ではないが、たとえば「南山詩」で「或○若○○」の形式を延々数十句も連ねるような、遊び心を働かせた詩が随所に見られる。こうした遊戯的な面は中国古典詩の伝統的な価値観からすれば否定されてしまう嫌いがあるが、韓愈の文学の中では欠くことのできない重要なピースである。また、元和年間の他の詩人に目を向けると、白居易の「長恨歌」や元ジンの艶詩などが流行しているが、韓愈の文学がこうした時代の風潮とどのように関わっているのか、さらに研究をすすめていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『韓愈詩訳注第三冊』を刊行したが論文発表が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
『韓愈詩訳注』の編集で得られた知見を活かしつつ、韓愈の交友関係について分析・整理を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究会や学会の出張費がなくなった。 次年度の書籍費に充てる予定。
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Research Products
(1 results)