2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on Religious Literature in Early Modern China :Mainly about Baojuan or Precious Scrolls
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20K00378
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松家 裕子 追手門学院大学, 共通教育機構, 教授 (20215396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小南 一郎 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 名誉館長 (50027554)
磯部 祐子 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (00161696)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宝巻 / 宣巻 / 口承文藝 / 戦瘟神宝巻 / 惜穀宝巻 / 紹興 / 安昌 / 二十四孝 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(2023年度)も、中国における実地調査を行うことができなかった。これは残念なことであった。しかし、各研究者はそれを補うべく、文献資料、Web上の資料、過去の実地調査の収穫などを用いて研究を進めた。とくに、今年度は、本研究のまとめとしての報告書(冊子体)(A)を刊行することができた。 この報告書は、研究期間中過年度の成果である、松家「晩清『惜穀宝巻』的特点和作者」(中国語)(B)、磯部「浙江省における新型コロナウイルス禍下の曲芸」(C)、同「「戦瘟神宝巻」を読む」(D)、2023年度中、他媒体に発表した成果である松家「鄭振鐸『中国俗文学史』「宝巻」のために」(E)とあわせ、書き下ろしの小南「口承文芸の実演とテキストへの定着」(F)、磯部「2023年 紹興における地方「戯曲」及び「曲芸」の研究状況」(G)、研究協力者による要木(藤田)佳美「明清民国期の紹興市鎮経済初探 -安昌鎮経済史研究-」(H)を掲載、総ページ数172の充実した冊子となった。 また、報告書に収録した以外の今年度中の成果として、松家「『惜穀宝巻』と余治」(日本語。上掲中国語論文の増補版)(I)、宝巻とも深くかかわる二十四孝についての小南「宋遼金元の墓葬壁画と二十四孝伝承の展開(下)」(J)がある。 上記をまとめれば、2023年度、本研究では、文献調査と実地調査の両方を等しく重視する本研究グループの基本姿勢を確認し(F)、宝巻研究史を通観し(E)、宝巻の作品分析を進め(I)、宝巻を支えた社会についての理解を深化させた(H)ということができるであろう。 なお、多くの残額が生じていたことから、本研究の研究期間を2024年度まで延長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は文献調査と中国における実地調査の両方を踏まえることを特徴としており、中国における実地調査が行なえていないことから、過去2年度は「やや遅れている」としてきた。しかし、この不可抗力による遅滞を別の方法で補うべく、各研究者は工夫しつつ研究を進め、今年度は、報告書の刊行を行なうことができた。したがって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究グループが、中国における実地調査への強い希望をもつことは変わらない。2019年9月以来の実地調査の空白期間中に生じた疑問点も多い。実地調査を可能とする環境が整えば、積極的に実地調査を行ない、宣巻をはじめとする語りもの藝能の実演を観察し、また芸能者とりわけ老芸能者たちへのインタビューも行ないたい。 本研究グループは、今年度から、「中国民間講唱文藝研究 ー語りの「場」から考えるー」という題目のもと、科学研究費(基盤研究(C))を受けられることになった。この新しい科研費による研究とバランスをとり、また両研究をうまく接合させながら、本研究のまとめにふさわしい研究を行ない、成果を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
繰り返し記しているように、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による人間の往来の制限が大きく緩和されている現在も、中国における実地調査やこれを目的とする渡航がむずかしい状況にある。次年度使用額が生じた主たる理由はここにある。 2024年度は状況が改善して、中国で実地調査を行なえることを願っている。実地調査がむずかしい場合は、中国で文献調査や研究者との交流を行なう。これも果たせない場合、中国以外の場所で文献調査や研究交流を実行する。あわせて海外の研究者の招聘も検討する。条件が整わず、旅費としての支出が予定していたほど行なえないと判明すれば、研究費を不足している文献資料の購入に充てる可能性もある。
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