2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K00382
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 清人 山形大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (80178722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日系アメリカ人 / Dale Furutani / Naomi Hirahara / 強制収容 / 共産主義 / ミステリー小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度においては二人の日系アメリカ人三世の作家、Dale FurutaniとNaomi Hiraharaのミステリー小説について、その作品の解説および分析を行い、その成果を「ミステリー小説と日系アメリカ人―Death in Little Tokyo と Snakeskin Shamisenを読む―」という論文にまとめた。 Dale FurutaniのDeath in Little Tokyo は殺人事件をめぐるミステリー小説である。その事件は太平洋戦争時における日系アメリカ人の強制収容、とりわけ忠誠登録をめぐって日系アメリカ人社会のなかで生じた対立が原因である。Hiraharaの小説 Snakeskin Shamisen も同様に殺人事件をめぐるミステリー小説である。内容は複雑ながら、その殺人事件の原因はやはり日系アメリカ人の強制収容に遡り、さらにその前後の時代における日系アメリカ人と共産主義との関係が加わる。FurutaniとHiraharaは、日系アメリカ人の歴史を紐解く手段としてミステリーの謎解きを利用した。彼らはミステリーという大衆的なジャンルを媒介として、日系アメリカ人の歴史をより多くの読者に知らしめたのである。 3年の研究期間において、本研究は日系アメリカ人三世の作家による「強制収容」物語の読解と分析を行った。物語の内容において、三世の作家は基本的に一世や二世の物語を踏襲したが、Julie Otsukaは語りの手法で新基軸を打ち出し、Cynthia Kadohataは人種差別の問題をより一般化し、また、FurutaniとHiraharaはミステリーという新たなジャンルを開拓した。三世の作家は決して既存の「強制収容」物語を単純に繰り返したわけではなく、多方向に発展させた。本研究では、こうした発展の様相を詳細に分析、解明した。
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