2022 Fiscal Year Research-status Report
Repetition and Diversity of "Modernization": Analysis of Discursive Deconstruction of "the East and the West" by Using Foucault's "Archaeology"
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20K00388
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊勢 芳夫 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 名誉教授 (80223048)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代化 / 知の考古学 / 近代化言説 / 日本植民地文学 / 英国植民地文学 / GHQ占領下政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミシェル・フーコーの「知の考古学」の研究理論を援用しながら、「言説形成=編成」概念の明確化を図ることによって独自の 「知の考古学」的方法論を確立すること、及び、その方法を歴史資料やフィールドワークによって収集したデータの分析に活用し、考古学者が地層から過去の遺物を発掘してその時代の生活様式を復元するように、過去のある社会における価値観や思考傾向を復元するものであり、この人文学研究としてはこれまであまり試みてこなかった研究を世に広める試みである。 「知の考古学」的方法論の理論的な構築については、すでに発表した論文から理論部分を抽出するとともに、それを簡潔にまとめて作成した論文を「『「近代化」の反復と多様性』の方法論について――「東と西」の知の考古学的解体に関する研究――」として令和4年7月30日発売の『月刊 考古学ジャーナル 7』に掲載し、公表を行った。 また、「知の考古学」的方法の具体的な実践については、英領インドにおける植民地政策とインド表象の構築、白人優位の世界システムへの植民地域の取り込みと、そのようなアジアの植民地化に直面した日本の近代化の促進と対抗言説の創出に関しての研究、及び、日本の植民地政策の一環である「日本・日本語化」について研究を行うとともに、さらに、そのように逸早く独自の言説形成を開始した日本が太平洋戦争の敗戦を機にGHQの占領政策によってアメリカの言説編成にいかに取り込まれていったかについて、イギリス、インド、そして日本の3方向の視点から、共時的及び通時的に、日・英の植民地政策とアジア表象の形成・変遷、GHQの日本占領政策、及び植民地統治下にあるアジア地域の土着性の変容について俯瞰的に比較研究を行っており、令和3年度までの研究成果を『「近代」の反復と多様性――「東と西」の知の考古学的解体――』として令和3年6月1日に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、研究対象地に行き調査し、海外や国内で資料収集すること、及び研究成果を日本語と英語により出版・公表することを目的に開始した。新型コロナウイルス感染症拡大により遅れていた海外や国内での資料収集については、ロンドンの大英図書館等において実施した。しかしながら、研究代表者の眼病の発症及びその治療のため、9月から1月まで研究調査を制限せざるを得なくなった。 研究成果を日本語と英語により出版・公表する計画については、日本語による専門書を令和3年6月に出版し、公表を行ったが、英語による公表は上記の眼病治療のため遅延している。 具体的には、19世紀から20世紀にかけての大英帝国のインド以東の東アジア政策とそれらの地域の土着性への影響を明らかにするため、平成4年7月19日から8月19日の期間にイギリスの大英図書館等において資料収集を行い、イギリスのアジア表象の形成・変遷を「知の考古学」的方法を用いて研究を行った。一方、旧英領インド住民の視点からの調査をバングラデュ・イスラム大学のラハマン教授との共同研究を継続するとともに、日本に招聘して研究会を令和4年3月に開催する予定であったが、コロナ禍に加えて眼病治療のため実施できなかった。他方、日本の東アジア研究、及び、植民地政策をとおして、日本語の言説に周辺地域がどのように位置づけられ、表象され、そして、日本を中心とする 「大東亜共栄圏」という西欧への対抗言説に組み込まれていったかの歴史的経緯、及び、日本の植民地統治下における台湾、朝鮮半島、および、旧満州の近代化と土着性の特徴、及び、GHQによる日本の占領政策に関する日本語資料を、平成4年6月20日から25日、及び、平成5年2月6日から10日の期間に国会図書館(東京)において調査し、資料収集を実施し、論文としてまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、研究対象地に行き調査し、日本及び海外で資料を収集すること、及び研究成果を日本語と英語により出版・公表することを目的にする。日本語による研究成果の公表に関しては、出版社渓水社から令和3年6月1日に出版した。令和5年度に関しては、英語による研究成果を取りまとめる作業を継続し、令和6年度中の公表を目指す。そのため、台湾、旧満州の研究者、及び社会学の立場から園田学園女子大学の山本起世子教授との情報交換を継続して行っていく。一方、海外や東京での調査や資料収集については、新型コロナウイルス感染状況を見ながら慎重に進めていく。具体的には、イギリス、インド、日本の3方向の視点から複眼的に検証することによって、19世紀から20世紀にかけての大英帝国のインド以東の東アジア政策とそれらの地域の土着性への影響を明らかにするため令和4年度に旧英領インド住民の視点からの調査を計画していたが、代表者の眼病により実施できなかったため、令和5年度にバングラデシュ・イスラム大学のラハマン教授との共同研究をインドにおいて令和6年1月(予定)に実施し、日本に招聘して研究会を令和6年3月(予定)に開催する。 また、日本の東アジア研究、及び、植民地政策をとおして、日本語の言説に日本の周辺地域がどのように位置づけられ、表象され、そして、日本を中心とする 「大東亜共栄圏」という西欧への対抗言説に組み込まれていったかの歴史的経緯、及び、日本の植民地統治下における台湾、朝鮮半島及び旧満州の近代化と土着性の特徴、そして、GHQによる日本の占領政策に関する日本語資料を、国会図書館(東京)において令和5年8月(予定)に調査し、資料収集する。
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Causes of Carryover |
令和4年度は令和3年度に引き続き世界的な新型コロナウイルス感染はまだ終息せず、また研究責任者の眼病により4カ月余り研究を中断したため、当初の計画の半分しか実施できなかった。東京での調査を平成4年6月20日から25日の期間と平成5年2月6日から10日の期間に実施し、海外においてはロンドンで平成4年7月19日から8月19日の期間に調査・資料収集を行ったものの、インドおよび台湾での調査や研究会を実施できなかった。令和5年度において令和4年度に予定していた海外での調査や資料収集をコロナの感染状況を見ながら慎重に進めていく。 具体的には、旧英領インド住民の視点からイギリスのアジア表象の形成・変遷を「知の考古学」的方法を用いて調査・研究を行うため、バングラデシュ・イスラム大学のラハマン教授との共同研究をインドにおいて令和6年1月(予定)に実施するとともに、日本に招聘して研究会を令和6年3月(予定)に開催する。また、日本の東アジア研究、及び、植民地政策についての歴史的経緯と日本の植民地統治下における台湾、朝鮮半島、及び、旧満州の近代化と土着性の特徴、そして、GHQによる日本の占領政策に関する日本語資料を、国会図書館(東京)において令和5年 8月(予定)に資料収集する。しかしながら当初予定していた静宜大学(台湾)での調査に関しては、急激な円安で予算オーバーの可能性があるので中止する予定である。
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Research Products
(1 results)