2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00392
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
柳谷 千枝子 (浅田千枝子) 岩手医科大学, 教養教育センター, 講師 (40714332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グレアム・グリーン文学 / ナラティヴ・メディスン / 医療倫理教育 / スピリチュアル・ケア / トータルペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
1) Graham Greeneの作品分析 令和2年度は、作家の長編小説の中でも、The Power and the Glory (1940)、The Heart of the Matter(1948)およびA Burnt-out Case (1960)を取り上げ、前回の科研費研究で今後の課題となったテーマの分析を進めた。具体的には、作中の病者(と考えられる登場人物)の家族や友人、高齢者の物語へと視野を広げ、作品精読のもと、病者本人とその周囲の者たちの痛みや意識の変容、心理描写を抽出、英語表現の背後に隠された作者の意図を把握するべく、より綿密な分析を行った。
2) 医療倫理教育の実践 「医療と物語」(選択科目/医・歯・薬・看護学部1年)、「医療倫理とヒューマニズム」(専門科目/薬学部4年)、English Reading & Writing (必修科目/医・歯・薬・看護学部1年)の科目の中で、本学の医学生を対象にグリーンの諸作品とNarrative Medicineに関する医療倫理教育を実践した。特に、「医療と物語」および「医療倫理とヒューマニズム」では、病者の物語、病いの物語、医療従事者の物語、患者を支える家族の物語の観点から「生きることと死ぬことの意味」を考察し、「苦痛や痛み」についてより理解を深めるべくそれらが顕著に描かれた諸小説を読んでビブリオバトルを開催した。これらの医療倫理教育を実践するにあたり、教育目標して、医学生自らが答えの明確な問題、答えのない問題、加えて、抽象的概念、具体的概念に触れることに主軸を置き、それらの経験を通して医療をとりまく現実的・実際的・倫理的・潜在的問題、生死、患者の心情、対応の仕方等に対する思考と姿勢を育むことを目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、全国的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内外の学会および出張がすべてキャンセルとなった。その理由により、当初計画していたイギリスでの調査や学会での情報・資料収集の機会が得られず、また、国内での研究会およびワークショップにも参加できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も感染症拡大の影響により、様々な計画や行動の制限が予想される。特に、本研究課題にとって大きなウェイトを占めるイギリスでの調査や学会参加の計画は実施が困難となろう。ただし、国内では少しずつオンラインによる学会や研究会も実施され始めており、本研究課題遂行にとって必要な情報収集や研究報告は可能であると考えられる。さしあたり、令和3年度は、Graham Greeneの作品分析を継続して行い、さらにスピリチュアル・ペイン、スピリチュアル・ケア、メディカル・ヒューマニティーズの調査および教育実践、研究報告等を中心に、国内でできる限りのことを計画に沿って進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は全国的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内外の学会および出張がすべてキャンセルとなった。そのため、当初計画していたイギリスでの調査や学会での情報・資料収集の機会が得られず、また、同様の理由から国内での研究会およびワークショップへの参加も叶わなかったことから、国内外の出張旅費が発生しなかったため。現時点では、最終年度の研究成果出版費用の一部およびオンライン講義システム構築(例:有料アプリを用いて学生同士のディスカッションを促進する環境を整備する)の一部に充てることを検討している。
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