2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K00392
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
柳谷 千枝子 (浅田千枝子) 岩手医科大学, 教養教育センター, 講師 (40714332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グレアム・グリーン文学 / ナラティヴ・メディスン / メディカルヒューマニティーズ教育 / トータル・ペイン / スピリチュアル・ケア / 医療倫理教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) メディカルヒューマニティーズ教育研究: 患者の物語を読み、その経験について書くことは患者をより深く理解するために必要なツールを提供すること、また文学を読むことは医学における道徳的問題についての批判的思考と共感的な認識を要することから、文学を医学教育に取り入れることの有効性について確認した。 2) 作品分析: 前年度の研究項目(登場人物のトータルペイン、QOLおよびウェルビーイング)をさらに深化させることを目的とし、スピリチュアルペイン、ヘルスヒューマニティーズ教育の分析に着手した。 3) 国外調査: G. Greene International Festival 2023への参加およびフィールドワークを再開し、本課題が学際的な研究であることを確認した。具体的には、参加したオープン・ディスカッションの中で、Greeneの作品が現代の情報伝達や個人の意思疎通においていかに重要な問題を提起しているかという点に注目した。文学を通して登場人物の心理や感情の変化を意識することは、患者の心情を推し量り、適切な言葉を選択する能力の育成につながることから、将来、臨床で患者と接する学生教育にとって不可欠な情報を収集した。さらに、医療の歴史 (John Hunter) や標本に触れる機会を得て、本研究の発展と学生教育に有益な情報を収集した。 4) メディカルヒューマニティーズ教育の実践: 医療系の選択科目や英語科目を中心に、患者や自身のトータルペイン/QOL/ウェルビーイングについて考える機会を設けた。「医療と物語」では「苦痛」をテーマとしたビブリオバトルを開催した。英語科目では医療テーマについて学生によるディスカッションやペアワークを実施した。例えば、世界の様々な宗教を調査し、それぞれの教義で禁止されている医療行為を発表する等、調査や議論を通して自分の考えや意見を整理する時間を設けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5年度から、国際学会への参加およびイギリスでのフィールドワークを再開できたことにより、本研究課題に関する実地調査や情報収集、意見交換を通して次の研究につながる新たなテーマを見つけることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度の方針は、基本的に研究計画に基づいて国内外の調査を実施しながら研究を遂行する。また、過年度、海外渡航制限により生じた研究計画の遅延および変更を補うため、今年度はこれまでの研究成果をまとめて、2つのジャーナルで報告する。
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Causes of Carryover |
海外渡航制限により、R2年度~R4年度の期間中の海外渡航費、宿泊費、学会参加費やフィールドワークに関わる諸経費等の支出が発生しなかったことから、当初の研究計画を大幅に変更せざるを得なかったため。以上の理由から補助事業を2年延長し、R5年度から国外調査や国際学会への参加が可能となった。なお、R6年度も計画通りに遂行できる見込みである。
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