2022 Fiscal Year Research-status Report
ロマン派期英国・アイルランド小説の系譜研究―19世紀の正典形成と受容
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20K00394
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉野 由利 学習院大学, 文学部, 教授 (70377050)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イギリス文学 / アイルランド文学 / ジェイン・オースティン / マライア・エッジワース / 正典形成 / 文学の受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
Covid-19の影響で年度中に予定していた海外資料調査を次年度以降に延期することになったが、国内で入手可能な資料の調査、国内関連学会・研究集会での学会活動に加え、ウプサラ大学Emma Clery教授の招聘を通し、引き続き最新の研究動向の把握を進めた。特に、Clery教授との意見交換や所属先研究機関で主催した講演会では、1970年代以降のオースティンとエッジワースの再評価の契機となったMarilyn Butlerの先行研究以降主流となっているロマン派期イギリスのフランス革命論争の文脈で政治言説との間テクスト性を重視する観点とは大いに異なり、エコクリティシズムを応用しつつ、ウィリアム・クーパーの著作、特に『課題』(1785)が19世紀初頭まで与えた文学的社会的影響力を重視する最先端の観点と手法に知見を深められたことは実に有意義であった。また、『ユリシーズ』刊行100周記念に呼応して構成した日本ジョンソン協会大会シンポジウムでの研究発表に関連する登壇者や出席者のとの意見交換、学際的に女性の権利、共感の文化とジェンダーの関係を探求した共編書の刊行を通し、グレイト・ブリテンとアイルランドの議会合同への文学的応答を近現代ヨーロッパの幅広い視野からオースティンとエッジワースの作品の意義を再検証することができた。『ラックレント城』(1800)、『ベリンダ』(1801)、『アイルランド英語の非合理表現』(1802)、『マンスフィールド・パーク』(1814)等における女性や先住アイルランド人、アフリカ出身奴隷の表象の特徴、特に言語的特性の表象の差異と同時代以降の受容を、特に文壇と女性作家の緊張関係を重視しながら分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響で年度中に予定していた海外資料調査を次年度以降に延期することになったが、Clery教授との意見交換や国内で入手可能な資料の調査、国内関連学会・研究集会での学会活動を通して、一定度補うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外資料調査は、今年度中に調査先で実施可能になった場合に行う。それまでは、引き続き国内で入手可能な資料やオンライン学会・研究会を活用する。
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Causes of Carryover |
Covid-19感染の影響で国内外の出張ができなかったため関連する予算を繰越した。海外資料調査は、今年度中に実施可能になった場合に行う。
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Research Products
(3 results)