2023 Fiscal Year Research-status Report
ロマン派期英国・アイルランド小説の系譜研究―19世紀の正典形成と受容
Project/Area Number |
20K00394
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉野 由利 学習院大学, 文学部, 教授 (70377050)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | イギリス文学 / アイルランド文学 / ジェイン・オースティン / マライア・エッジワース / フランシス・バーニー / 文学史 / 文壇 / レビュー誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Covid-19の影響で海外資料調査を次年度に延期することになったが、引き続き国内で入手可能な資料の調査、国内関連学会・研究集会、オンライン国際研究集会での学会活動を通し、最新の研究動向の把握を継続した。主な取り組みの一つとして、18世紀から19世紀末へかけてのイギリス帝国の拡張とセレブリティ文化興隆の相関関係、作家のセレブリティ化に関する論点の把握に努め、エッジワースとオースティンの先駆者であるフランシス・バーニー、エッジワースの同世代ライバルであったシドニー・オーエンソン、両作家の作品受容および名声(セレブリティ)の形成とジョン・ウィルソン・クローカーら男性評者らによる酷評の事例を検証した。特に、エッジワースとオースティンの創作活動が盛んであった1810年代に文壇を炎上させたバーニーの『彷徨う女』(1814年)の受容史を重点的に調査した。『彷徨う女』は、フランス貴族と結婚し、10年ぶりにフランスから帰国したかつてのセレブリティ作家であったバーニーの待望作であった。クローカーらの書評が、露骨な性差別、年齢差別、バーニーのイングランドへの忠誠心への不信感を示しながら、作品をバーニーの身体と意図的に混同して性的な視線で分断し、作品を矮小化したことに留意し、当時の男性中心の文壇が女性作家に規定した役割を考察した。成果の一部は、日本オースティン協会年次大会のシンポジウムで口頭発表し、論文にまとめた。主な取り組みのもう一つとして、エッジワースの女性作家としての評価と名声に重要であった児童文学と教育論の文脈理解を深めるため、同時代のアイルランドの「こども」の表象と宗教言説の関係を概観した。同分野の最新の研究動向への応答を日本アイルランド協会年報に寄稿した。また、本研究課題のこれまでの成果の発表が海外の複数の書評に取り上げられ、エッジワース協会が準備中の展示へも反映されることになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響で予定していた海外資料調査を延期することになったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度に海外資料調査を実行する。
|
Causes of Carryover |
Covid19の影響で海外での資料調査を次年度へ延期したため。また、海外航空券と現地滞在費が高騰しているため、次年度の海外資料調査の予算が不足とならないように今年度の支出を控えめにしたため。次年度に海外資料調査を実施する。
|
Remarks |
アイルランドの子どもの表象の今ー映画『コット』(2022)と学会動向ー 日本アイルランド協会会報(116)6-6 (2024)
|
Research Products
(2 results)