2020 Fiscal Year Research-status Report
Repertory and Performance of the Playing Company in the Early Stuart Period : 1603-1642
Project/Area Number |
20K00399
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 酉子 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (60277283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英国スチュアート朝演劇 / 宮廷マスク / 舞台衣装 / 商業劇団 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国スチュアート朝時代 (1603-1649)に王室メンバーお抱えとなった商業劇団が、宮廷・民間各々の演劇舞台でどのような劇をどのような演出で上演していたかを検証すること、及び、そのような劇団の活動が、清教徒革命といわれる王制転覆、社会転換にどのように係わっていたかを明らかにすることを目指すものである。 職業俳優は宮廷で劇を上演するほかに、王侯貴族が主要演者を務めるマスク(仮想仮面劇)にも脇役として雇われていた。宮廷マスクの演出や豪華な意匠は、市井の劇場でも取り入れられ、マスク的要素に溢れる劇中劇を含む『テンペスト』(1613) のような新作が生まれた。豪華な特殊衣装を用いるのがマスクの特徴だが、これは、王室の庇護を受ける劇団の経営・収益の向上によってもたらされたといえる。さらに、王室との関係が密になるにつれ、スペイン大使の衣服がそのまま劇団に流れ、舞台で当人に扮した俳優が着用した例、王妃が宮廷マスクで使用した衣装が劇団に下げ渡された例も見られた。 宮廷マスクでは、王侯貴族が神々に扮する王権神授説のテーマや牧歌的田園を描いたパストラルと呼ばれるテーマなど、現実から遊離した内容が目立つのに対し、富裕市民層の観客が多い民間劇場では、貴族社会の腐敗をテーマとする戯曲上演が増えていった。宮廷・民間の演劇舞台では、劇テーマの解離が時代と共に進んでいったが、劇団は双方を行き来しながら、その分断に寄与していたともいえる。 令和2年度は主に王室会計記録の一次史料、及び劇団記録に基づき、宮廷舞台で代表的演劇がどのような衣装・演出で上演されたかについて分析を進め、上記の点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年は年明けからコロナウィルス感染が急拡大し、大学新年度開始が5月にずれ込んだ。また従来、対面で行ってきた授業も、急遽、オンラインでの実施に変更となり、授業コンテンツ(動画、配信資料など)の作成と学生対応に膨大な時間を割くことになった。感染終息が見通せない中、オンライン授業の延長が続き、試験実施方法の見直し等、授業スケジュールの変更が繰り返され、1年を通して落ち着いて研究ができる環境になかった。 学会も中止やオンライン実施になるなど、変更が相次ぎ、研究成果発表の機会が失われ、海外・国内での資料収集、実地調査も行うことができなかった。 上記の理由により、令和2年度の研究計画は当初予定通りには進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は主に民間演劇舞台について、以下の2点を中心に研究を行う予定である。 1. 室内劇場:スチュアート朝期、ロンドン市内には室内劇場と屋外劇場、二つのタイプの劇場が存在したが、時代が進むにつれて両者の間で、芝居のテーマや演出の隔たりが拡大していった。室内劇場では、貴族社会の腐敗や退廃の現実を舞台に投影した『白魔』(1608)や『モルフィ公爵夫人』(1614)がヒット作となった。陰謀や毒殺、密通事件等を扱い、特に観客を集めたウェブスター作品をはじめ、ジョンソン、フレッチャー,チャップマン、ミドルトン、マーストン等、人気を呼んだ芝居のテーマを経年的にたどり、時代の様相を検証する。また商業劇団が、宮廷マスクの演出・意匠を室内劇場にどのように取り入れていたのか、当時の舞台の可視化を目指す。 2. 屋外劇場:エリザベス女王時代から庶民の観客が多かった屋外劇場は、ジェイムズ代に入って次第に衰退した。劇団活動の比重が、より収益の上がる室内劇場にシフトしたことが大きな理由であるが、室内劇場と併せて屋外劇場での上演劇の変化を追うことにより、劇団活動の実態が明確なる。 コロナウィルス感染は令和3年も終息しない様相であり、海外での資料収集は令和2年に続き、行えない可能性が高い。また学会開催も予定変更がありうるため、研究はデータ分析、論文執筆に重心を置いたものになる。
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Causes of Carryover |
令和2年はコロナウィルス感染拡大により、国内、国外とも学会は全て、中止またはオンライン実施となったため、旅費・学会参加費の支出がなかった。また大学授業がオンラインに切り替わったため、授業準備や課題採点などのほか、学生対応に関わる業務時間が激増し、研究に当てられる時間が減少した。これに伴い、書籍購入も少なくなった。これらの理由により、次年度使用額が生じることとなった。 令和3年もコロナウィルス感染の完全な終息は見込めず、海外での資料収集は行えない可能性が高い。また学会開催も予定変更となりうるため、書籍購入、解析度の高いコンピュータ購入を行い、データ分析と論文執筆に重心を置いて研究を進める計画である。年度後半以降、学会での成果発表や資料収集が行えるようになれば、旅費の使用が見込まれる。
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Research Products
(1 results)