2022 Fiscal Year Research-status Report
Repertory and Performance of the Playing Company in the Early Stuart Period : 1603-1642
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20K00399
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 酉子 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 教授 (60277283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 英国ルネサンス演劇 / 舞台衣装 / 舞台演出 / 商業劇団 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国スチュアート朝時代 (1603-1649)を対象に、商業劇団が (1)宮廷・民間各々の演劇舞台でどのような劇をどのような演出と衣装で上演していたか、(2)1640年からの内乱に至る社会変化に演劇活動がどのように係わっていたかを明らかにしようとするものである。当時の衣装や演出の実像を可視化しようとする試みは、国外で徐々に研究が進んでいるものの、国内ではこれまでほとんど行われてこなかった。 スチュアート朝時代、商業劇団は宮廷公演の回数が増し、王室との関係が密になる一方、市井では王政への反感が増加するなか、観客の意向に沿う反王制・半宮廷の芝居を上演するなど、二面的な活動を行なっていた。前者に関しては、宮廷公演における王室メンバーとの関わり方、後者に関しては、商業劇場での芝居の内容や演出方法の具体例を取り上げながら、内乱に至る社会で演劇が果たした役割を明らかにしようとした。令和4年度には、上記についての研究を引き続き行なうとともに、本研究の成果をまとめる書籍出版の準備を進めた。 2020年以降、コロナウィルス感染拡大により海外での学会参加や調査が行えなかったが、令和4年度にはロンドンで行われた国際学会(The Association of Dress Historians)に出席し、市内の博物館等で調査を実施した。 書籍出版準備に関しては、英国ルネサンス演劇に特徴的な役柄である古典古代の神々や英雄、魔女や悪魔、道化、妖精などが、どのような演出・衣装で演じられていたか、チューダー朝からスチュアート朝の宮廷饗宴・商業劇場の一時史料、二次史料をもとに執筆作業を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題は2020年度開始の3年計画であったが、同年からコロナウィルス感染が世界で拡大し、国外・国内ともに資料収集、実地調査を行うことができなかった。学会や研究会も中止やオンライン実施になるなど、変更が相次ぎ、研究活動に障害となる事態が続いた。 本研究は、英国スチュアート朝時代の商業劇団の活動や舞台衣装・演出の実相解明に取り組むものであり、英国内での調査、資料収集が欠かせないが、英国で学会参加、調査活動の一部を行うことができたのは、2022年10月であった。しかし同月、調査・資料収集を予定していたロンドンのNational Portrait Galleryは修復工事のため、閉館中であった。 上記のような理由により、令和4年度の研究計画は当初予定通りに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「状況」に記載の通り、本研究の進捗には遅れが出ていたため、令和5年度までの延長申請を提出し、承認された。 これにより令和5年度を最終年度として、本研究のまとめの成果を以下の2点を中心に発表する予定である。 1. 舞台演出と衣装の具体像について:英国ルネサンンス演劇では、中世期には見られなかった登場人物(古典古代の神々や英雄、妖精など)が現れ、また魔女や悪魔、道化の造形も変化していった。特にロンドンにあっては、海外との貿易・交流の拡大とともに、商業劇場の舞台に異国人も多く登場するようになった。これらの役柄がどのような姿で演じられていたのか、当時の演出・衣装の実像を可視化復元する。 2. 衣装調達について:チューダー朝時代は宮廷で行われる演劇の衣装調達や制作を饗宴局が行ったが、スチュアート朝になると同部局の仕事は商業演劇に係る許認可に比重が移っていった。一方、商業劇団は宮廷との関わりが増え、市井の劇場での集客も増し、経営的に安定したことから、衣装調達や準備を独自に行えるようになっていった。商業劇団発足前の16世紀半ばから、劇団創成期の1580年代を経て1642年の解散に至るまで、舞台衣装の調達方法がどのように変化したかを辿り、当時の社会における演劇の位置付け、劇団の立ち位置の変遷を明らかにする
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Causes of Carryover |
本研究課題は2020年開始の3年計画であったが、同年からのコロナウィルス感染拡大の影響で、国内・国外の学会参加や調査の実施に大きな支障が生じた。英国で学会参加、調査の一部が実施できたのは2022年10月であったが、調査及び資料収集予定であったNational Portrait Galleryは修復工事のため、閉館中であった。 次年度使用額が生じた主な理由は、上記の事情で当初計画通りの調査を実施できなかったことである。 延長が認められた次年度は、遅れていた調査・資料収集を行い、研究を進める予定である。
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