2021 Fiscal Year Research-status Report
Afrofuturismとは何か?-英語圏黒人思弁文学における人種と未来像
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20K00400
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡島 慶 日本大学, 経済学部, 准教授 (10710569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黒人文学 / Afrofuturism / Octavia Butler / black humanity |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度からの文献研究を通して、Afrofuturismの理論的発展について、ある程度の知見を得ることができた。令和3年度は、これまでの研究の延長という形でOctavia Butlerの小説を精読し、遺作Fledglingについて延期されていた研究発表を行うことができた。研究発表後の質疑を通して、以下の2つの論点を指摘していただき、Butler作品のさらなる理解のための重要な示唆を得ることができた。1点目は、Butlerの出産をめぐる言説での位置づけである。研究代表者の発表では、主人公Shoriが黒いヴァンパイアを生み出すことが、難局を切り抜けるための唯一の方策となる点を指摘したが、これまで黒人作家や女性作家が描いてきた「出産」をめぐる物語とどのようにシンクロするのだろうか。Butlerは短編 "Blood Child"でも出産について描いており、このテーマがButlerという作家の理解には欠かすことができないと思われる。もちろん、出産というテーマは、Afrofuturismが想起する黒人たちの未来を構成するために必要不可欠な営みでもある。2つ目の指摘は、Butlerとblack essentialismの関係である。Fledglingでは、これから生まれてくるであろう黒い子どもたちにShoriたちの未来が託される結末となるが、「黒人であること」に過剰な価値を付与することは、逆説的に本質主義に陥るという危険性を孕むのではないか。この課題は、Afrofuturism全体に通底するものだと思われるが、Butler自身は、Fledgling出版後に、そうした危険性について思考を深めていたようである。文献調査を通して、Flesglingの続編を練っていた作業用ノートに断片的にButlerの考察が描かれていることが分かったが、図書館のアーカイブ調査ができておらず、研究が止まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染症拡大に伴い、予定していたアメリカでの研究調査がいまだに実行できていないため、研究計画通りに進めることが困難となっている。また、所属先で全学的な委員会に所属し、従前の研究エフォートを十分に確保することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカへの研究調査の実施がいまだ不透明であるため、現地の図書館と密に連絡を通り、遠隔でのアーカイブリサーチを進めていきたい。また、書籍や論文の精査は変わらずに進められているので、論文の発表準備に力を注いでいく。
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Causes of Carryover |
長らく予定していたアメリカでの研究調査がいまだ実行できておらず、その予算を繰り越すことになったため。 予算の使用計画としては、現地図書館のアーカイブリサーチを行うことをまず第一に考えたい。おそらく遠隔で行われることになると思われる。そして、そのリサーチに基づき、さらなる文献収集に予算を投じる。最終的には、現在執筆中の英語論文を加筆修正していくことになるため、英文校正の費用にも使用する。
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Research Products
(3 results)