2023 Fiscal Year Research-status Report
Afrofuturismとは何か?-英語圏黒人思弁文学における人種と未来像
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20K00400
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡島 慶 日本大学, 経済学部, 准教授 (10710569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Afrofuturism / Black community / Octavia Butler |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、アメリカへの研究出張が数年越しに実現できた点が一つの研究成果として挙げられる。当初の研究計画に組み込んでいたカリフォルニア州パサデナにあるThe Huntington LibraryにてOctavia Butlerの遺稿調査を実施することができた。とくに『Fledgling』の続編として構想されていた 『Asylum』、『Flight』と名付けられた作品の断片を収集できたことが有益であった。昨年度からの研究テーマとの関わり合いで興味深い点は、①『Parable』シリーズ同様、『Fledgling』もシリーズ化を構想していた点、②『Parable』のLaurenのように、『Fledgling』後のShoriにも自らの(ブラック)コミュニティを再建するテーマが付与されていたことが挙げられる(『Fledgling』とのつながりで言えば、もう一つ重要な発見があったのが、現在執筆中の論文の内容となるため、ここでは割愛させていただく)。遺稿調査から確認できたのは、Butlerが、Afrofuturismから派生する女性を中心とした黒人コミュニティの再建に強い関心を抱いていたと思われる点である。この点は、遺稿の中で断片的に描かれる新たなsymbiontとの関係や農園を購入してコミュニティを作ろうとするShoriの姿から確認することができる。また、作品構想のメモに、失われた自らの過去とコミュニティの再建を等価の行為として考えている文章も見つかり、Butlerの先進的なAfrofuturism思想を確実に読みとることができた。 遺稿調査から、こうした重要な発見をすることができたが、もう少し資料を集めたいと考えている。引き続き、The Huntington Libraryのオンライン・アーカイブなどを利用し、『Fledgling』についての論文をまとめ、発表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
過去数年にわたりコロナの影響があり、本年度にようやく第一回目のアメリカへの研究出張を実現することができた。出張自体は大変実りあるものとなったが、研究計画としては、遅れている。コロナのほかに研究計画が遅れている主要因の一つとして、大学業務の多忙化が挙げられる。研究計画時には予期していなかった大学本部の委員会活動に参加することになり、多くのエフォートをそちらに費やさざるを得なくなった。結果として研究計画の遅延につながっている。 論文としてのアウトプットを予定しているAfroturusismの理論的構築については、草稿が出来上がりつつあるので、次年度の出版が見えてきている。Octavia Butlerの論文についても、出張の成果を取りまとめつつ執筆を進められているので、次年度はこの2本をこれまでの成果として発表したい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在2本の論文執筆が進行中である。1本目はAfrofuturismの理論的総括について、2本目はOctavia Butlerの遺稿に基づくFledgling論についてである。とくに1本目は早々に仕上げて、次のNnhedhi Okoraforの作品分析に入っていきたい。作品自体は手に入れており、すでに精読を開始しているので、とくにButlerとの比較を通してOkorafor作品の独自性を浮き上がらせていく。また、同時に先行研究の収集ととりまとめを行っていく。先行研究の収集については、研究代表者のアメリカの出身大学院のデータベースを利用することができるので、最新の論文の動向なども抑えていく。また、8月まで延長された米国ワシントンD.C.のスミソニアン博物館で開かれているAfrofuturism展への出張調査も実現させたい。出張の成果は、上述したAfrofuturismの理論的総括の論文に入れられるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
これまでコロナの流行や大学業務の多忙化により当初計画していたアメリカへの研究出張が実現できておらず、研究計画自体が遅れているため、次年度に使用額が生じることとなる。次年度は、ワシントンのスミソニアン博物館で行われているAfrofuturism展の調査を含め、2回目の出張を実現させる予定である。円高、物価高の影響もあり、国外出張には多くの費用が必要となる。この2回目の出張は、現在執筆を進めているAfrofuturismの理論的総括の論考に反映させたいと考えている。また、論文執筆は英語で行っているため、英語校正の費用も必要となる。さらに、Okorafor関係の先行研究の文献収集(洋書書籍)にも費用を充てる。洋書は高額であり、十分な費用の確保が必要となる。
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