2020 Fiscal Year Research-status Report
Republican Aunthood: Intergenerational Texts and the Separate Spheres Criticism in Nineteenth-Century American Women Writing
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20K00401
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
増田 久美子 立正大学, 文学部, 教授 (80337617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 19世紀アメリカ女性作家 / 市民社会 / 領域批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀アメリカのジェンダー諸相を考えるさいに分析視点となる「男女の領域分離」について、その妥当性を再考するため、女性作家による文学テクストを「おば」(aunthood)という視座から解釈することを目的としている。「おば」の介入によって、「完全な市民権」をもたない新しい世代の女性たちが「市民」として行動し、その自立した自己像を形成した可能性について、新たな解釈の可能性を試みるものである。 まず、「権利なき女性」の存在をどのように「市民」として位置づけられるのかを検討するため、「女性、市民社会、領域」にかんする先行研究を精査した。それによれば、「領域」の言説は当時の女性の生き方を制限しながらも、家庭の延長線上に女性的・道徳的価値観をさまざまな社会問題に結びつけることで、公私領域のあいだに「別なる公的空間」を構築した。女性が道徳的影響力を行使するという身ぶりは、女性の公的空間での行為を正当化する合理的説明として機能したのであるが、それは女性が慈善活動や社会改良運動などに従事するという場でしかなく、さらに「市民社会」という概念を導入することで、たんなる「私的な家庭女性」を超えうる可能性を探る必要があった。ある定義によれば、市民社会とは、女性たちの政治的主張と市民的行為が醸成される場であり、あらゆる言説の行き交う文化的領域だという。しかし、そのような社会における女性市民としての具体的な事例は、提示されていなかった。 そこで、「男女の領域分離」を提唱しつつ「女性の向上」を目指したセアラ・ヘイル(Sarah Josepha Hale, 1788-1879)の自伝的テクストを取り上げ、領域論をめぐる言説に市民社会および女性市民の形成を読む込む分析をおこなった。その結果、ヘイルの描く自画像のなかに「権利なき女性」が「市民」となりうる模範的モデル提示したことが判明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀アメリカ文学における領域批評および「市民社会」にかんする先行研究を精査することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、19世紀初期から後半までに出版された文学テクストとして小説を中心に、以下のような多様なテクストを取り上げていく。(1)女性作家による大衆小説テクスト(多くの書き手は女性であるが、これに限らない)、(2)女性誌に連載された物語テクスト、(3)実在した女性についての伝記文学テクスト等である。これらの作家たちが描く「おば」が各テクストにおいてどのように表象され、機能しているのかについて、とくに「おば」と若い女性による世代間交流のなかで過去や知識(知恵)の継承と、それに対する若手の受容や反動という側面に着目し、それによって創出されうる新たな女性像の可能性を あきらかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度は、資料収集のため海外旅費を計上していたが、新型ウイルス感染拡大の影響によりリサーチを断念したため、次年度への使用額が発生した。2021年度もおそらく旅費を使用しないと思われるため、研究資料やパソコン周辺機器等の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)