2021 Fiscal Year Research-status Report
Republican Aunthood: Intergenerational Texts and the Separate Spheres Criticism in Nineteenth-Century American Women Writing
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20K00401
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
増田 久美子 立正大学, 文学部, 教授 (80337617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 19世紀アメリカ女性作家 / 領域批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀アメリカのジェンダー諸相を考えるさいに分析視点となる「男女の領域分離」について、その妥当性を再考するため、女性作家による文学テクストを「おば」という視座から解釈することを目的としている。「おば」の介入によって、「完全な市民権」をもたない女性たちがどのように市民的自己像を形成したのか、その可能性について新たな解釈を試みる。 昨年度に引き続き、「権利なき女性」の存在を「市民」として位置づけることを検討するため、「女性、市民社会、領域」にかんする先行研究を精査した。しかし、このカテゴリーにおける具体的な事例を見いだせず、今年度はここに「人種」を加え、白人女性作家の小説テクストのみを対象としない方向性を検討することとした。 具体的には、黒人女性によるパフォーマンス的テクストとして、メアリ・ウェッブおよび彼女が演じた朗読劇『クリスチャン・スレイヴ』(1855)を取り上げた。これはハリエット・ビーチャー・ストウが自らの小説『アンクル・トムの小屋』を戯曲化した作品である。これによって判明したのは、「女性の領域」と「人種」をめぐる両者の思想的差異であった。ストウにとって戯曲テクストとその上演とは、黒人女性という主体に声を付与することで人種への寛容な態度を示す機会でありつつも、実際には自身が「真の女性らしさ」から逸脱することなく、つねにリスペクタブルな『アンクル・トムの小屋』の原作者であり続けるためのもくろみであったと考えられる。いっぽう、ウェッブによる『クリスチャン・スレイヴ』の朗読によって生じさせたテクスト的意味とパフォーマンス的意義とは、ストウの企図をすり抜ける問題を含んでいた。ウェッブは領域を越境しないリスペクタブルな女性であることを維持しながら、ひとりの人間に生じる階級的・人種的横断を演技で示し、人種カテゴリーの流動性と作為性を提起したのであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの論文を書籍として取りまとめて出版することができたが、そこに時間を費やしてしまったため、新たな論文を公表することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、19世紀をとおして出版された文学テクストを中心に、女性作家による小説テクストや女性誌に連載された物語テクストに着目する。これらの作家たちが描く「おば」が各テクストにおいてどのように表象され、機能しているのかについて、とくに「おば」と若い女性による世代間交流のなかで過去や知識(「知恵」)の継承と、それに対する若手の受容や反動という側面に注目し、それによって創出されうる新たな女性像の可能性をあきらかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、資料収集のため海外旅費を計上していた予算が新型ウイルス感染拡大の影響によりリサーチを断念したため、次年度への使用額が発生した。2022年度もおそらく旅費を使用しないと思われるため、研究資料やパソコン周辺機器等の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)