2022 Fiscal Year Research-status Report
An Integrated Study of the Background of Anglo-Saxonism Formation in the Victorian Age
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20K00403
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金山 亮太 立命館大学, 文学部, 教授 (70224590)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アングロ・サクソニズム / ジャーナリズム / 愛国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は8月に約10日間連合王国ハロゲート市に出張し、当地で開催されていた国際ギルバート&サリヴァン祭に参加し、本研究の中核をなす19世紀の大衆演劇10作を実際に見ることができた。2020年以降の新型コロナ禍以降、海外出張もままならない状況だっただけに、このような形で未見の作品も含めて見聞することができた意義は大きい。この経験を踏まえて、現在執筆中の研究書『サヴォイ・オペラ大全』(仮)の中の中核部分の議論にかなりの進展を見ることができた。現在は原稿用紙200ページ分ほど原稿を書き進めているが、最終的には500から600ページ程度のものになる予定であり(挿絵などは除く)、完成にもう少し時間がかかる見込みである。原稿完成の段階で科研費の出版助成の応募、あるいは他大学の出版会などに原稿を送付し、刊行の見込みについて検討することにしている。 また、勤務校の図書館にある19世紀のジャーナリズム資料のうち、本研究に直接関係のある記事およそ20篇を抜き出し、時系列に並べることで時代の変遷とともに愛国主義的言説が形成されていった過程の一端を知ることができた。この作業を今後も進めて、最終的なサンプル数を50本程度にまで増やすとともに、別の雑誌の同じ時期の記事との比較を通して政治的傾向(保守vs革新)と愛国主義的言説がどのように相互に影響して国民の意識変革につながったかについての仮説を立てたい。この結果をもとに上記の研究書の結論部分が書かれることになり、それは今後のアングロ・サクソニズム研究のために必要不可欠な部分になるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響により予定していた海外出張を断念せざるを得なかったこと、円安が一層進んだ影響で本来ならば購入可能だったはずの資料や書籍の価格が高騰し入手できなくなったこと、出版が予定されていた資料や書籍がロシア対ウクライナの戦争の影響を受けて出版社が刊行を延期あるいは中止するなど、こちらの方では如何ともしがたい理由でここ数年は研究にはかばかしい進展がなかった。2022年夏より海外渡航がある程度可能になり、2023年5月からは渡航の自由度が大幅に向上するため、今後はもう少し頻繁に実地調査ができるようになることを期待したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は勤務校からサバティカルを得て研究に没頭できるはずが、学外の仕事(学会関係ほか)に予想外に時間を取られるという誤算があった。ただし、秋以降は資料の読み込みが進み、執筆中の研究所の中核部分の議論はほぼ固まった。今後は読み残しているジャーナリズム関係の資料及び図書館に入っている一次資料などを活用して、自分の議論の補強を進めるとともに、資料の翻訳作業にも着手したい。 個別の研究課題としては、今年度中に『立命館英米文学』および『立命館文学』に発表する予定の原稿を準備している。前者については具体的なサヴォイ・オペラ作品を取り上げ、そこに見られる愛国主義的言説がどのように風刺されているかを検討する。後者に関してはアングロ・サクソニズム生成の契機となった19世紀後期のジャーナリズムに見られる「愛国報道」を分析する予定である。また、所属学会より依頼されているヴィクトリア朝小説の共訳書の担当分についても下準備を進めることにしている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が年を追うごとに漸増していったのは、新型コロナの感染拡大が続いたために海外出張や国内出張が全くできない時期が3年近く続いたことが最大の原因である。また、円安が一層進んだことで本来ならば購入できるはずの図書や資料が大幅に値上がりした結果、資料の購入が後回しになり、見かけ上は予算が余っているように見えている。実際は買いたくても手が出ない価格になってしまった資料の購入を見合わせたたために剰余金が発生しているのである。このような、単年度では処理しきれないという事案が毎年複数回発生した。いずれも、こちらとしてはどうしようもない事情によるものであり、結果的に研究の進展が滞ったことは否めない。 本来ならば2023年度は本研究の最終年度に相当するが、従来の予定よりも遅れている中で慌てて拙速に物事を進めるよりは、本研究の完成を1年延期する必要性も視野に入れている。いずれにせよ、本研究の成果は単行本の形で公刊することを目指しており、単に予算消化のためだけに不十分な研究結果を世に問うことは望ましくないと考えている。
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