2021 Fiscal Year Research-status Report
Gender and Linguistic Features in Middle English Mystical Literature
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20K00405
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中世 / 神秘主義 / 語用論 / 文体 / メタファー / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、まず、本研究課題の前に科研費で採択されていた研究課題を遂行する過程で 2019 Annual Conference of Mystical Theology Network で研究発表した “Metaphor Users in Late Middle English Women’s Mystical Texts” を書き直して、5月半ばに Mystical Theology Network の論文集に投稿した。この論文は、社会的に弱い立場にある女性の文体と、男性聖職者の文体との違いに着目するもので、本研究課題にも深く関わるものであるが、まだ査読中のようで編者からの返事はまだない。 また、執筆を依頼されている中世の femininity(女性性)について、原稿案を編者の Michelle M. Sauer 教授(ノース・ダコタ大学)に送っていたが、テーマが中世キリスト教神秘主義に偏りすぎている、中世ヨーロッパで共存していたユダヤ教徒やイスラム教徒の femininity についても含めるようにとの指示があった。返信を受けて、アジアの女性の femininity と比較したものにしてはどうかという案をお送りしたが、編纂予定の書籍のテーマとしては広すぎるとのことで、アジアとヨーロッパの比較は今後別の形で発展させることとし、依頼された原稿では中世ヨーロッパの femininity についてのみ扱うことにした。この論文の執筆に関しては、中世ヨーロッパにおけるユダヤ教徒とイスラム教徒の女性について概説した書籍を集めたり、関連する先行研究論文を取り寄せたりして、まだ資料収集しているような状況である。 また、本研究が対象とする中世イギリス神秘主義作品を最初期に書いた女性であるノリッジのジュリアンだけを扱う学会 New Visions of Julian of Norwich が 2022年7月15日、16日に英国オックスフォード大学のサマヴィルカレッジで行われると知り、2月に研究発表に応募して採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」の欄で述べたとおり、依頼されている femininity に関する原稿に関して、編者の意図した議論の範囲と著者の議論の範囲がずれていたため、調査対象を広げて、資料をさらに集める作業からし直し、議論のアイデアも練り直さなくてはならなくなった。 本研究課題は、本研究計画が採択される前に科研費助成事業に採択された研究課題「中世イギリス神秘主義文学における対話と読者に対する説得的ストラテジーに関する研究」を遂行するうちに得たアイデアをもとにしており、前の課題から本課題への橋渡しというべき研究も並行して遂行している。2021年度は、その橋渡し的研究成果を発表するための論文の投稿、研究発表への応募も並行して行なうことになった。そのため、年度初めに進めたいと考えていたジェンダー論に関する資料収集になかなか手をつけられず、研究計画よりやや進捗状況は遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の欄で述べたとおり、今年度は中世ヨーロッパの femininity について述べた論文を執筆しながら、7月15日、16日に英国オックスフォード大学のサマヴィルカレッジで行われる New Visions of Julian of Norwich で “What do scribal corrections show in Paris Bibliotheque National Fonds Anglais MS 40?” の題目で発表予定の研究をまとめる作業を行う。この学会には、直接参加すると自宅待機期間が発生し、勤務先での授業をしばらく休講しなければならなくなってしまうという不都合が生ずるため、オンラインでの参加・発表を予定している。 この研究発表を終えた後は、The Book of Margery Kempe に関する論文を、久木田直江先生の記念論文集に投稿するため秋までに仕上げる予定である。 この論文を仕上げた後、残りの期間で、本来は2021年度に着手する予定であった現代の談話における女性の言語使用の特徴と男性の言語使用の特徴の違いに関する先行研究の網羅的調査に着手したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため海外出張が禁じられていたので、本年度を通して調査研究や国際学会参加のための出張ができなかった。研究計画では、関連する中世イギリス神秘主義作品の写本に関する調査研究や本研究に関連する国際学会参加のための費用をかなり計上していたが、調査研究は現在のところ延期せざるを得ず、国際学会参加もようやく次年度ひとつオンラインで参加する機会を得たような次第で、当初の予定通りに研究活動が進んでいないため、2021年度までに予定していた研究活動を2022年度以降に行わざるを得なくなっており、次年度使用額が生じている。 2022年度から海外出張が許されるようであれば、当初2021年度以前に計画していた英国図書館やフランス国立図書館での写本の調査研究旅費として次年度使用額から予算を執行する予定である。
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Remarks |
最新の研究業績は上記 web ページにはまだ反映されていない。
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