2022 Fiscal Year Research-status Report
Gender and Linguistic Features in Middle English Mystical Literature
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20K00405
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中世 / 神秘主義 / ジェンダー / 写本 / 文体 / 語用論 / メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、まず、本研究課題に深く関わる Julian of Norwich の著作の重要な写本のひとつ Paris, BnF, Fonds Anglais MS 40 について、これまでに行った調査で明らかになったことをまとめ、英国オックスフォード大学 Somerville College に於いて行われた国際学会 New Visions of Julian of Norwich (参加はオンラインでも可能なハイブリッド方式)の Panel Four: Textual Interventions のセッションで 7月16日に‘What Do Scribal Corrections Show in Paris, BNS, Fonds Anglais MS 40?’の題目で口頭発表を行った。この発表で扱った写本 Paris, BnF, Fonds Anglais MS 40 は1650年頃に作成されたものだと推定されているもので、イギリス宗教改革の影響でフランスに渡ってきた修道女によって筆写されたものであろうと先行研究で推定されている。女性によって英語で書かれた最初期の宗教散文だとされる Julian of Norwich の作品を、宗教改革の影響を逃れようとした修道女が筆写したという経緯は、本研究をさらに発展させる意味においても非常に興味深い。その写字生が写本に施した修正箇所を入念に調査し、その修正の傾向から写字生が写したもとの写本はどのようなものだったか、また、写字生が中世の写本、その写本がもともと書かれたであろうおよそ150年前の英語についてどれくらいの知識を持っていたかを推測しようと試みた。本研究では、特に、写字生が動詞 shewyth と現在形で最初筆写したあと、時制をしばしば過去形の shewyd に修正していることに着目し、写字生はあまり正確に中英語期の英語を読めたとは言い難いのではないかと考察した。 また、8th International Anchoritic Society Conference での口頭発表をもとに執筆した論文をこの大会の論文集に投稿中で、その論文の発行に向けて編者達と何回かやりとりをし、推敲に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきたことから、2021年度までと比べるとより多くの時間本研究に取り組むことができたが、これまでの研究の遅れを取り戻すにはいたらなかった。学会発表や学会やセミナーへの参加もオンラインで行うことができたが、やはり海外で新型コロナウイルスに感染することについての心配を完全に払拭することができず、以前のように写本の調査に海外の図書館に出向くことがためらわれたため、学会発表の内容もこれまでに調査したことを見直してまとめるだけに留めざるを得なかった。また、2022年度末に International Anchoritic Society の研究大会での発表募集があり、応募したが、まだ新型コロナウイルスの影響が残っているからか、十分な応募数がなかったとのことで、大会は1年後に延期されることになった。まだ新型コロナウイルスの研究への影響がしばらく続くのではないかと心配している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、「研究実績の概要」のところで述べたように、 8th International Anchoritic Society Conference での発表に基づく Selected Papers の論文集に投稿した論文を、編者の要求に応えられるレベルに仕上げて、出版に結びつける予定である。また、Mystical Theology Network の論文集に投稿している論文についても、編者からコメントが帰ってきているので、締め切りまでに書き直して出版に結びつけたいと考えている。また、久木田直江先生の記念論文集に寄稿させていただくことになっているので、2016年の Mystical Theology Network の大会で行った発表に基づいて論文を執筆し、投稿しようと準備している。また、本研究計画にとって最も重要な femininity に関する論文の執筆を、ハンドブックの編者であるノース・ダコタ大学の Michelle M. Sauer 教授と相談しながら進めたいと考えている。 このように、コロナ禍が去りつつある状況で、これまであまり進んでいなかった出版計画がいずれも急に進み始めているので、今年度はほとんどの時間を論文の執筆や、書き直しに当てなけれならないのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のための大学の出張制限は解除されたが、海外で感染した場合に十分な治療が受けられるのか、万一感染した場合にどれくらい大学に迷惑がかかるのかなどの心配が払拭できなかったため、当初の研究計画の通りに、研究に関連する写本の調査のために海外の図書館に出向いて調査することは躊躇せざるを得なかった。国際学会での発表も、2022年にオンラインでようやく行ったような状況で、当初の予定通りに研究活動が進んでいないため、次年度使用額が生じている。 2023年度には、当初予定していた英国図書館や仏国国立図書館での写本の調査研究を行ない、その旅費として次年度使用額から予算を執行する予定である。
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Remarks |
最新の研究業績は上記 web ページにはまだ反映されていない。
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