2023 Fiscal Year Research-status Report
Gender and Linguistic Features in Middle English Mystical Literature
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20K00405
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中世 / 神秘主義 / ジャンル / 文体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究課題に大きく関わる女性神秘主義者が語った内容を筆記したテクストThe Book of Margery Kempeにおいて、日時や場所を表すことばと一緒にどのような内容が描写されているのか調査分析し、その結果明らかにになったことをまとめて英国オックスフォード大学St John’s Collegeに於いて行われたMystical Theology Network Conference 2024のSession 4: Literary and Philosophical Approaches to Mysticism and Actionのセッションで2024年3月20日に ‘On Dates and Places in Margery Kempe’s Actions and Contemplations’の題目で口頭発表した。The Book of Margery Kempeは神秘主義テクストとして分類されるのが常だが、その内容や文体には旅行記や日記といったこの時代から発達していく新しいジャンルに近い部分が多く、他の神秘主義のテクストとは異なる性質を多く併せ持つ。旅行記では、しばしば、テクストの参与者が時間の経過とともに移動する場所を表す副詞句が、時間を表す副詞と同じ機能を示すことから、本研究では、このテクストの章や段落の始まりに位置する文のはじめに現れる副詞句を抽出し、その文、もしくは、その文ではじまる段落の内容を分析した。その結果、祭日を表す副詞句が文頭に来ている場合には、その祭日の意義と関連する内容がしばしば語られること、祭日はまたMargeryが記憶をたぐりよせるきっかけとなっている可能性があることを明らかにすることができた。また、非特定の日時を表すOn a tyme, another tymeといった副詞句が特定の場所を表す副詞句や、主たるテクストの参与者を三人称で表すthis creaturという表現と併せて用いられている箇所で話題転換が行われていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、本プロジェクトを始めて以来、オンラインでなく初めて海外に出向いて国際学会で発表することができた。また、2022年度と2023年度は時間をかけて本プロジェクトに取り組んだが、プロジェクトを始めた頃に、新型コロナウイルス感染拡大のためにオンラインの授業準備に忙殺され、海外の図書館に調査に出向くこともできず、海外の仲間の研究者と直接会ってじっくり情報交換することもできなかった期間に滞った研究の遅れを十分に取り戻すには至らなかった。 また、円安の影響で航空運賃や宿泊代が非常に高くなり、写本を所蔵する図書館に以前のように長期休暇ごとに出向いて調査することが経済的に難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本プロジェクトの最終年度となるため、ノース・ダコタ大学の Michelle M. Sauer 教授の助言に基づいて進めてきた femininity に関する論文の執筆を仕上げたいと考えている。これまでの研究の過程で、神秘主義作品を残した中世英国の女性たちの文体に反映されている当時の女性達が受けた社会的な制約に類似する例が、英国だけでなく、東西の他の文化にも見られることに気がついたので、今年度は他文化における女性によるテクストとの比較研究を行なって、本研究をさらに発展させたいと考えている。 また、宗教改革の影響で大陸に渡ってきた修道女たちによってノリッジのジュリアンのテクストが写されたという事実も、女性によるテクストの伝播という観点から見て興味深いと考えているので、彼女たちが写した現存する写本のもとの写本はどのようなものであったのかを明らかにする研究にも残りの期間で取り組んで、今後さらに研究を発展させられればと考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度から新型コロナウイルス感染拡大防止のための大学の出張制限は解除されたが、2022度は海外で万一感染した場合への心配から、国際学会にもオンラインでのみ参加し、直接海外に出向いて調査したり、国際学会に対面で参加したのは2023年度が初めてだった。本研究を始めた当初に自由に研究活動ができなかったために生じた遅れはまだ取り戻せておらず、次年度使用額が生じている。 2024年度も国際学会での発表に応募しており、円安の影響で、本研究計画を開始する前に見積もった金額より航空運賃や滞在費用が高額になると思われるため、次年度使用額と本年度の助成金を合わせた金額が、発表のための渡航費用と滞在費用として必要になると考えている。
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Remarks |
最新の研究業績は上記 WEB ページにはまだ反映されていない。
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