2022 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学における「イギリスの爵位権主張の語り」に関する研究
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20K00406
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
小宮山 真美子 長野工業高等専門学校, リベラルアーツ教育院, 准教授 (30439509)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 19世紀アメリカ文学 / ナサニエル・ホーソーン / マーク・トウェイン / 爵位権継承 / イギリス荘園屋敷 / Claimant Narratives / Materialization / 南北戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では“Claimant Narratives”の語りの特性とアメリカ文学史での位置づけを見出すべく、ナサニエル・ホーソーン、マーク・トウェインの作品を中心に、文学ジャンルを横断する形で、作品が内包する英米両方向からの「家系」および「所有」の問題を確認する。その上で、イギリスの伝統的な貴族制と、そこから離脱して誕生したアメリカ国家の民主主義の理想と現実が、イギリスの土地空間が絡んだ19世紀の物語を媒介としていかに描出されていたかについて明らかにすることを目的としている。 令和4年度は、ふたつの研究を行った。ひとつめはナサニエル・ホーソーン作品に出現する「イギリスの荘園/屋敷」および空間所有の概念が、アメリカ国内の土地所有権への欲望といかに絡み合うのかに焦点を当てた分析である。特に初期作品から見られる「埋葬」の行為が、過去と土地不動産をめぐる問題に関連していたことを明らかにした。その上で、アメリカにおける根源的な土地所有の問題が、晩年イギリスを舞台とした未完の物語まで接続されていることを検討し論文にまとめた。原稿はすでに校了しており、令和5年度の5月に共著本として出版される。 ふたつめはマーク・トゥェインの『アメリカの爵位権主張者』(1892)に関する分析である。3月に開催された日本ナサニエル・ホーソン協会東京支部において、トウェインの『アメリカの爵位権主張者』に関する口頭発表を行った。19世紀アメリカにおけるClaimant Narrativeの系譜についてのまとめを紹介をし、南北戦争を境界として本テーマの扱いがどのように変化したかについて分析をし発表を行った。またおよびフランシス・ホジソン・バーネットの爵位権問題が描かれた児童文学についても研究を進めており、論文の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4度は、当初2年目に予定していた「ホーソーンとトゥエイン作品における語りの比較、亡霊の扱いについての分析」を行った。双方を繋げての具体的な論考は準備中だが、前段階として、別々に行った分析を比較しながら19世紀後半のClaimant Narrativeについての口頭発表を行うことができた。さらに3年目に予定していた「過去と未来を繋ぐ「家系」とアメリカにおける歴史認識についての考察」についても進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、本研究の総括を行う。コロナ禍で2年目に実施できなかったイギリスのボルトンにあるスミシルズ・ホールへの現地調査も行う予定である。またトウェインの爵位権に関する作品に関して、海外での学会発表に応募中である。発表後は論文にまとめて国内外の学会誌への投稿を予定している。さらに余力があれば、フランシス・ホジソン・バーネットの作品に関する分析も進め、口頭発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は当初予定されていた学会参加ができなかったこと、イギリスへのフィールドワークを次年度に見送ったことが重なり、旅費の支出が予定より少なくなった。来年度にイギリスおよびオランダへのフィールドワークを予定している。また国内の対面での学会にも複数参加を予定している。謝金については、英語原稿のネイティブチェックが発生しなかったため0円となった。こちらも国際学会応募の準備を進めており、次年度で使用する予定である。
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