2021 Fiscal Year Research-status Report
英国における「ロウワー・ミドル・クラス」と「郊外」の表象
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20K00410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 潤美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70222726)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 階級 / 郊外 / 英国文学 / 英国文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は英国の文学、文化における「ロウワー・ミドル・クラス」のイメージの表象を、十九世紀から現代までたどって、「ロウワー・ミドル・クラス」のコン セプトがいかにアッパー・クラスおよびアッパー・ミドル・クラスを脅かし、数々の風刺、揶揄、批判を生み出してきたかを考察し、「ロウワー・ミドル・クラ ス」のイメージとステレオタイプの形成を明らかにすると共に、それが現在の英国の文学と文化にどのようなインパクトを与えているかを分析することを目的とする。「ミドル・クラス」研究はこれまで英国でもなされてきたが、英国の文学や文化、そしてじっさいの社会における存在が大きい反面、その実態がこれまで あまり明確に示されてこなかった英国の「ロウワー・ミドル・クラス」を、そのコンセプトの誕生から現在までたどる研究は少ないため、本研究は英国の文学、文化 理解に新たな視点をもたらし、貢献するものである。2021年度では特に英国の「アッパー・クラス」のイメージと文化的意義が、いかに「ミドル・クラス」、中でも「ロウワー・ミドル・クラス」に影響を与え、同時に「ロウワー・ミドル・クラス」の抱く「アッパー・クラス」像を逆に形成してきたかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度では、「ロウワー・ミドル・クラス」の「事務員」と「郊外」のコンセプトに焦点を当てる計画だったが、特に「郊外」がアッパー・クラスのカントリー・ハウスの伝統と歴史と切り離せないものであるため、アッパー・クラスとカントリー ハウスについての考察をまず深め、一次資料および二 次資料を確認し、分析した結果を単行本『ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級』(白水社)にまとめた。コロナウィルスの影響で予定していた、ロンドンのBritish Libraryにおける資料収集は実現できず、国内の学 会や他大学の図書館や資料館での資料収集も制限されたが、ILL(図書館間相互貸借)やデジタル・アーカイブを利用して資料を収集した。さらに、オンラインで 実施された学会や研究会で情報交換、資料収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度にはさらに「事務員」、「郊外」などの「ロウワー・ミドル・クラス」のイメージと文化的意義に関する資料収集と分析を続ける。夏はロンドンのBritish LibraryとBritish Film Instituteにおいて資料収集を行う予定だったがコロナウィルスの感染及びヨーロッパの状況によってはその時期を来年の3月に延期する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響で国内および国外での学会が全てオンライン開催となり、また、最初に予定していた、英国における資料収集が実現できなかったため。2022年度においては、国内外での学会参加と資料収集に使用する。
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Research Products
(2 results)