2021 Fiscal Year Research-status Report
18、19世紀のイギリス小説における泣く男性の表象の変遷
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20K00411
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
日臺 晴子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40323852)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感情 / 理性 / 道徳 / 啓蒙思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18、19世紀に書かれたイギリスの小説の中での男性の落涙に纏わる表象を通時的に分析することを通して、小説の黎明期の作品における男性の涙と18世紀の後半の作品で大量に流されることになった男性の涙の質的違いが何に起因するのか、そして19世紀に男性の涙が異常を示すものとして周縁化されていったのは何故かということを明らかにすることを目的とする。令和3年度は、18世紀後半に書かれたHenry MackenzieのThe Man of Feeling (1771)を読み、主人公が涙を見せる場面における感情と理性の働きを分析し、令和2年度に分析した三作品(Robinson Crusoe、Travels into Several Remote Nations of the World, in Four Parts. By Lemuel Gulliver、The History of Tom Jones, a Foundlingとの比較を行った。The Man of Feelingにおいては主人公の落涙の頻度が高くなっているのはもちろんのこと、他人の不幸や憐れな状況に対して感じ、涙を流す。他者の苦しみに対する感受性の大幅な発達がThe Man of Feelingには見られたため、道徳との関係性を見るために、スコットランド啓蒙思想でつながりのあるAdam SmithのThe Theory of Moral Sentiments(1759)を読み、The Man of Feelingの主人公の感受性の高さは、他者の感情や行為の適切性を評価することと関係していることが確認された。 研究の成果としては、論文「風景に注がれるまなざしの倒錯―「リングストーンズ」における「村落の地獄」の執筆が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
大英図書館での資料収集、調査を予定していたが、昨年度に引き続き渡航制限により断念した。また、オンライン授業への対応や新規科目の設置などを含む学内業務の増加により、国内で収集できた資料にもすべて目を通すことができていないことから、このような進捗状況にあると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に予定していた海外での資料収集が行えなかったため、当該年度は、主にHenry MackenzieのThe Man of Feeling (1771)の精読と分析を中心に行った。令和4年度にはこれまで積み残している18世紀の神経解剖学関連資料を読み、令和2、3年度に読んだ作品群における感受性と理性の関係について考察を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定していた渡航ができず、次年度使用額が生じた。渡航ができるようになってから、海外での資料収集を少し期間を長めにとって行いたい。
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