2020 Fiscal Year Research-status Report
18世紀のシェイクスピア劇中歌に関わる学術ネットワークの構築
Project/Area Number |
20K00417
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
三原 穂 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (60593936)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | シェイクスピア / バラッド / 劇中歌 / 学術編集 / 歴史的批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
トマス・パーシー編『古英詩拾遺集』には、その第1巻の第2編にシェイクスピアの劇中歌やその関連歌が特集され収められているが、それはシェイクスピアと劇中歌とを強く関連付けようとするものであった。研究初年度の令和2年度においては、『拾遺集』第1巻第2編の最終歌である「フランチェスコ修道僧」に焦点を当てて研究を遂行した。当時のバラッドオペラでよく取り上げられた歌謡‘The Bailiff’s Daughter of Islington’の内容に基づいてパーシーがつくったこのパロディ歌は、シェイクスピアの複数の劇中歌が織り交ぜられたパスティーシュとなっている。「フランチェスコ修道僧」が、喜劇『じゃじゃ馬ならし』でペトルーキオが歌う断片歌(観客の笑いを誘うほどシェイクスピアの時代にはよく知られていたものだった)の完全版をめざすものとなっているという仮説を立てることができたので、研究二年度以降にはこの研究結果をまとめて国内外の学術誌に投稿する。 上記の研究との関連で、研究初年度は、シェイクスピアの劇中歌を敷衍して説明するべく、『拾遺集』第1巻第2編の筆頭を飾る「アダム・ベル、クラフのクリムとクラデズリーのウィリアム」(以後「アダム・ベル」)にも注目し、この歌に関するパーシーによる手書き原稿(大英図書館所蔵)の調査を行い、その調査結果をまとめて書誌学的観点から論文を書き上げ、書誌学系の学術誌に投稿したところである(現在審査中)。「アダム・ベル」の編集題材をパーシーに提供したのはデイビッド・ギャリックであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大のため、海外渡航が不可能であるため、必要資料を閲覧するこができず、研究の一部が止まってしまっている。しかしながら、上記のように論文一本完成済みとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の仮説を証明するべく、ジョージ・スティーヴンズ、エドモンド・マローン、エドワード・ケイペル等が編集した18世紀のシェイクスピア全集における、『じゃじゃ馬ならし』4幕1場に登場する問題の断片歌に関する脚注を精査する必要がある。そうすることで、研究二年度では、研究目的1として掲げた、パーシーとシェイクスピア編集者たちの学術ネットワークの構築を理解することができるだろう。さらにその断片歌に関わる、ギャリックの演出台帳等(シェイクスピア・フォルジャー図書館所蔵)も調査して、研究目的2の「ギャリックを加えた学術ネットワーク」の研究へとつなげることができるはずである。
|
Causes of Carryover |
パンデミックのため資料調査が予定通り進まず、またその成果は満足には得られていない。これは、海外渡航に伴う、大英図書館やハーバード大学ホートーン図書館、シェイクスピア・フォルジャー図書館など有名図書館へのアクセスが難しいためであり、渡航をあきらめなくてはならず、渡航費を使用しないままになってしまったため次年度使用が生じた。
|
Research Products
(3 results)