2023 Fiscal Year Research-status Report
18世紀のシェイクスピア劇中歌に関わる学術ネットワークの構築
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20K00417
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
三原 穂 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60593936)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シェイクスピア / ギャリック / スコットランド啓蒙 / オシアン / 『ダグラス』 / 学術編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度においては、昨年度に引き続き、デイビッド・ギャリック(David Garrick)を中心とする18世紀のシェイクスピアに関するテーマ(第一テーマ)とともに、スコットランド啓蒙とシェイクスピアというテーマ(第二テーマ)について、研究計画調書で示された研究目的の達成を試みた。 第一テーマの研究に関しては次のようにまとめられるだろう。ギャリックがシェイクスピア生誕200年祭においてシェイクスピアをbardと呼んだのは、ジェイムズ・マクファーソン(James Macpherson)によるオシアン(Ossian)詩の翻訳からギャリックが間接的に影響を受けたためであることがこれまで指摘されてきたが、本研究においてはマクファーソンとギャリックを直接結びつけ、マクファーソン及びアレクサンダー・カーライル(Alexander Carlyle)を含めたスコットランドの文人たちとの交流をギャリックが深めたからであることを明らかにした。 第二テーマに関しては、次のようにまとめられるだろう。スコットランド啓蒙と強くかかわる、ジョン・ヒューム(John Home)の悲劇『ダグラス』(Douglas: A Tragedy)とマクファーソンのオシアン詩翻訳は、シェイクスピアへの対抗意識の表れとみなされる。シェイクスピアを凌駕するスコットランドの国民詩人を創出するために、スコットランド啓蒙を担う文人たちは、classical geniusとして称賛されるホメロスを、native geniusすなわちCeltic bardのオシアンと重ね合わせて、オシアンの地位を高めようとする一種の神格化を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度までは、新型コロナウィルス感染拡大により、海外渡航が不可能であったが、令和4年度からは、海外渡航が徐々にしやすい状況となり、令和5年度からはコロナ禍以前のように、必要資料を海外の研究機関において閲覧することが可能となったため、研究を前進させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ギャリックは、膨大な学術資料を所有していたため当時のシェイクスピア編集者たち、特にジョージ・スティーヴンズに頼られる存在であり、『古英詩拾遺集』の編集者トマス・パーシーもギャリックとの交流を通して、彼からシェイクスピアの劇中歌に関する古資料を借り出した。このようなギャリックの学術面の研究を、昨年度における今後の研究の課題として指摘したが、研究四年度はこの面における研究が滞ってしまったため、この停滞を逆に契機としてとらえ、研究五年度には、研究計画調書において示した研究目的2の「ギャリックを加えた学術ネットワーク」の研究を推進する。
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Causes of Carryover |
令和4(2022)年度に延長が承認されたが、新型コロナウイルス感染症の影響によって研究計画を変更せざるを得ず、令和6(2024)年度末まで研究期間を再延長することになったから。令和6年度は、海外の研究機関等への出張のため、主に旅費として残金を利用する予定である。
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