2021 Fiscal Year Research-status Report
"Sea-faring Scots" in 19th Century British Novels and Border-crossings
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20K00419
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松田 幸子 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 准教授 (10575103)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スコットランド移民 / ナショナル・アイデンティティの形成 / 越境性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は前年度実施することのできなかった資料収集を集中的に行い、次年度の成果のために情報を整理した。19年度9月のNational Library of Scotlandでの調査に基づいて、R.L. Stevensonの旅行記を中心に分析した。とりわけ、Across the PlainsやThe Amateur Emigrantといった、アメリカ・南洋への旅についての手記から、Stevensonのスコッティシュ・アイデンティティが、越境によって形成されていることを確認した。このことから、19世紀から20世紀にかけてのスコットランド系移民のコミュニティがアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに点在しているという事実を認識することとなった。スコットランド系移民は「グローバル・クラン」(global clan)として、現在でもネットワークの中で、スコッティシュ・アイデンティティを維持している。Angela Mclarthy編のGlobal Clan: Scottish Migrant Network等の著書を踏まえて、19世紀にはじまるスコットランド系移民の移動とナショナル・アイデンティティ形成の過程に焦点を当てて研究を進めた。また、18世紀以降の大英帝国におけるステレオタイプとしてのスコットランド像について探るために、イギリス国内のガイドブック的な旅行記を集めたWilliam Mavor編によるThe British Tourists; or Traveller's Pocket Companionを分析し、18世紀以降、スコットランドのランドスケープがどのようにイメージ化されていたのかを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
20年度以来の世界的な感染症の流行により、当初スコットランド国立図書館で行う予定であった調査をいまだに行うことができていないため。また、国内においても、多くの図書館で外部からの入館を規制しているため、例えば東京海洋大学図書館での資料調査を行うことができず、包括的なデータの収集に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年5月現在の時点で、研究調査のための海外渡航はいまだ現実的ではないため、日本国内から利用可能なオンライン・データベース(National Library of CongressやBritish Newspaper Archive等)を活用し、可能な限り、主にアメリカへ渡ったスコットランド系移民の手記や旅行記を幅広く収集する。それらを、19世紀のスコットランド系の作家であるStevensonらの著作(Across the PlainsやThe Amateur Emigrant)を並行して読むことで、海を渡ってなお形成されるスコッティシュ・アイデンティティとはどのようなものなのかを精査する。また3月に口頭発表を行い、これまでの成果を発表したうえで、論文化するにあたっての意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
海外渡航しての海外研究機関での調査が不可能であったため。
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