2020 Fiscal Year Research-status Report
Transatlantic Print Culture and the 18th-century Great Awakening
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20K00423
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増井 志津代 上智大学, 文学部, 教授 (80181642)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第一次大覚醒運動 / ホイットフィールド / エドワーズ / 宗教 / ピューリタニズム / エクィアーノ / メソジスト / 宗教と文学思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は予定していた海外リサーチ旅行を遂行することはできなかったが、国内で研究発表や論文執筆、リサーチを行うことができた。主要な第一次資料であるEarly American Imprintsがコロナ禍における特別処置により取次店を通して公開され、アクセスが可能となった。17、18世紀の出版についての研究はアメリカ学会『アメリカ研究』の特集論文として第一次大覚醒期のホイットフィールドの活動とオラウダ・エクィアーノによるSlave narrativeの関係を中心にまとめて掲載した。さらに、ジョナサン・エドワーズが記録した"Communion Controversy"の翻訳を進め、聖餐式陪餐資格をめぐるエドワーズと教会役員との対立から牧師追放までの背景事情を細かく確認した。宗教上の論争は、共同体の有力者と牧師間の権威に関する競合を反映する。共同体のリーダー達が牧師を追放することから宗教的権威と政治的権威の拮抗が見えてくる。エドワーズの政教分離思想が論争を通じて明らかになった。 ミネルヴァ書房より出版予定の歴史教則本用に「ピューリタニズムと聖書」を執筆し、ネイティヴ・アメリカン伝道に関する原稿を執筆したが出版の遅延により刊行されていない。同じく、丸善より刊行される『キリスト教文化辞典』に「ピューリタニズムの伝統から啓蒙へ」、「ホーソーンと緋文字」を執筆したものの、出版は22年度まで持ち越される。 研究旅行が計画できない年度ではあったが、Zoomを通じた研究会に国内外を問わずに参加し、啓発された。2020年12月26日、Zoom開催された初期アメリカ学会例会で「初期アメリカの人種と宗教ーOlaudah Equiano, "The Interesting Narrative"を中心に」と題した研究発表を行い、発表内容をまとめた原稿を学会「ニュースレター」に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外渡航制限により当初計画していた合衆国や連合王国でのリサーチができなかった。Web上で、資料を特別公開する図書館やコレクションに助けられた。また、Zoomを用いた研究会などに参加することで新しい知見を得ることができた。特にAmerican Antiquarian SocietyやHarvard University歴史学部等でZoom開催された研究会に複数回参加した。AAS主催のPhillis Wheatleyに関する研究会では特に刺激を受けた。近年は米国の研究者が、アフリカ系アメリカ文学研究のためアフリカに赴く傾向があり、作家作品のルーツを探る研究が出てきている動向を確認することができた。 ジョナサン・エドワードによる"Communion Controversy"や"Some Thoughts Concerning Religious Revivals"の翻訳を継続した。一見、宗教的な出来事が初期アメリカ地域共同体の政治、社会形成、権力闘争に深く関わるものであることを再認識することができた。エドワーズ全集翻訳出版プロジェクト(新教出版)の一貫として取り組んでいる翻訳作業を進展させることができたものの、年度中の脱稿には至らなかった。第一次資料に翻訳作業を通してじっくり当たることはできたが、背景調査のためのリサーチを現地で行うことができなかったのは残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が可能となり次第、計画している国外リサーチ(合衆国、連合王国)に赴きたい。これが叶わない場合も、米国の研究者と連絡を保ち研究交流を推進したい。2021年度は、5月14日、上智大学アメリカ・カナダ研究所において岩波文庫「シリーズ アメリカ合衆国史」Zoom読書会を研究者、学生、一般参加者に向けて主催する。6月19日、ICUで開催される日本ピューリタニズム学会では「伝道」をテーマとした日本、中国への英米の海外宣教に関するシンポジウムに司会・コメンテーターとして参加する。2021年度の目標は、本研究プロジェクトの目指す、宗教と人種、民族の関係をさらに深く掘り下げた研究と論文執筆を進めることである。現在取り組んでいる初期アメリカ宗教思想関係(エドワーズ)の翻訳プロジェクトを完成させると共に、渡航が可能となり次第、海外資料調査に赴きたい。海外渡航が引き続き困難な場合は2022年度に延期し、日本国内において研究会開催、論文執筆、翻訳プロジェクトの完成を目指す。これにより、研究の公表に向けた作業を継続する。さらに、国内でプロテスタント系の文献資料を有する青山学院、同志社、国際キリスト教大学の図書館でリサーチを行いたい。これまでの研究成果をまとめた研究書の出版を最終的に目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度は計画していた海外調査旅行をコロナ禍の長期化のため、2021年春季休暇まで待ったものの実現に至らなかった。そのため、予定額の執行ができずに年度末を迎えることになった。21年度は、海外渡航規制が終わり次第、調査旅行を計画したい。渡航先としてはアメリカ合衆国ボストンおよびケンブリッジでハーヴァード大学図書館、ボストン公共図書館、ウースターのAmerican Antiquarian Society資料調査を予定している。公共図書館は特に、第三教会(Old South Church)のThomas Princeコレクションにあたる。これにより、Phillis WheatleyのOld Southとの関係を調べると共に、18世紀メソジストと会衆派の交流関係についても調査したい。また、英国への渡航が可能となった場合は、ロンドンとオクスフォードに赴く。George Whitefieldと関係の深い、Countess of Huntington資料調査と共にOlaudah Equianoのメソジストにおける活動について調査する。両国への渡航が叶わない場合は、日本国内において取り寄せ可能な資料を集めて調査を進めたい。同時にメソジストと関係の深い青山学院大学、会衆派系の同志社大学、プロテスタント系資料全般を国際基督教大学などで調査する。
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