2022 Fiscal Year Research-status Report
Transatlantic Print Culture and the 18th-century Great Awakening
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20K00423
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増井 志津代 上智大学, 文学部, 教授 (80181642)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカのキリスト教 / 宗教と世界情勢 / ジョナサン・エドワーズ / ジョージ・ホイットフィールド / 第一次大覚醒運動 / 人種 / ジェンダー / モラヴィア派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年は、学会活動に積極的に参加した。6月5日、中央大学で開催されたアメリカ学会年次大会において「部会B アメリカ宗教と対立・融和・変革」の討論者として、3名の発表にコメントを行った。「アメリカの無宗教を考える」(佐藤清子氏)、「アメリカ・ユダヤ人の信仰と政治的分極化」(石黒安里氏)、「現代アメリカ政治と宗教」(藤本寵児氏)とそれぞれ、政治、社会動向と宗教との関係について分析考察する内容で、アメリカのみならず、世界情勢について宗教的観点から論じる興味深い内容であった。6月18日には、第17回日本ピューリタニズム学会研究大会に参加し、新渡戸稲造の思想についてのシンポジウムや研究課題の報告を傾聴し、刺激を受けた。同学会では、渉外委員長としての働きを担っている。 2022年度も学習院大学で開催された初期アメリカ学会例会に定期的に参加し、多くを学ぶことができた。また、書評を二本、依頼に応じて執筆した。日本アメリカ文学会年報『アメリカ文学研究』に、Yamaguchi Yoshinari氏による英文著書"American History in Transition: From Religion to Science"の書評(2022年3月31日発行)、さらに、小倉いずみ著『トマス・フッカーとコネチカット』(金星堂)の書評が「アメリカ学会会報」(2022年4月発行No. 12)に掲載された。執筆活動としては『はじめて学ぶアメリカの歴史と文化』(ミネルヴァ)に「ピューリタニズムと聖書」を寄稿した。『改革が作ったアメリカー初期アメリカ研究の展開』(小鳥遊書房)に編著者として参加し、「ジョナサン・エドワーズ『忠実なナラティヴ』における少女たちの回心」を寄稿した。海外調査に出かけることができなかったものの、国内の学会や研究会で刺激を受けながら、執筆活動や研究に取り組むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内における研究活動は、比較的順調に遂行できたものの、海外調査に出かけることができなかった為、当初の計画を変更することになった。渡航には赴けなかったものの、原稿執筆の時間を確保することができ、2冊の共編著書出版を年度内に行うことができた。特に、出版が遅れていた本(ミネルヴァ書房)がついに刊行されたのは幸いであった。長年にわたり取り組んでいるジョナサン・エドワーズ著作翻訳は、個人的にある程度進めたものの書籍としての刊行にはいまだに至っていない。この出版については今後の課題としたい。 本研究課題においては、海外の研究者との交流や図書館、歴史資料館での現地調査を目指していたが、研究年度開始から22年度までに実行することは叶わなかった。しかしながら、現地の研究者との連絡は継続しているので、このプロジェクトのために計画していた海外調査旅行を、パンデミックの様子を見ながら、一年の延長期間中にできるだけ遂行したく願っている。特に、ペンシルヴァニア州ベツレヘムにあるモラヴィア派図書資料館での調査を行い、現在も用いられているモラヴィア派の教会を訪問したい。モラヴィア派の共同体は教会を中心に現在も活動を継続していることは以前のベツレヘム訪問時に確認しているので、現地調査を行いたい。また、ニューヨークのブルックリンにあるHenry Ward Beecherが牧師を務めたPlymouth Churchを再訪したい。海に囲まれたブルックリンは船着場として、逃亡奴隷が上陸するための中継地となっていたと思われる。Plymouth教会の他にも複数の教会があり、逃亡奴隷の保護に協力していたと思われる。H. B. StoweはH. W. Beecherの姉であるが、この教会に通っていた。 海外への調査旅行が困難な場合は、国内で使用できるデータベース等の資料を用いて、できるだけ研究をまとめ上げたいと願っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も初期アメリカ学会、日本ピューリタニズム学会等で開催される研究会に参加しながら、共同研究と個人的な学びを継続する。さらに、これまでに発表した論文や翻訳を出版に向けてまとめたいと願っている。今年度は、パンデミックの様子を伺いながら、可能であれば海外リサーチに赴くことを目指す。ハーヴァード大学図書館、イェール大学図書館、ニューヨーク公共図書館の内、訪問可能な図書館を訪ねる予定。さらに、ペンシルヴァニア州ベツレヘムにあるモラヴィア派の歴史資料館を訪ねてリサーチを行いたい。現地における調査協力者とは既にコンタクトを取り、協力を要請している。国外における調査協力者は、David D. Hall(ハーヴァード大学教授)、Cheryl Boots(ペンシルヴァニア州ベツレヘム在住)、Nina Allen(ニューヨーク、ブルックリン在住)等である。ブルックリンでは、H. W. Beecherが牧師を務めたPlymouth Churchを中心に近隣教会との逃亡奴隷保護のための協力関係について調査したい。この教会は、文豪のMark Twain、奴隷制廃止運動に貢献したFrederick Douglass、さらにAbraham Lincoln大統領がかつて訪問している。現地訪問により、17世紀ピューリタニズムがどのような形で残存し、18世紀、19世紀のアメリカで文化的、思想的な影響力を保持したかについて歴史的な流れを追跡したいと願っている。
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Causes of Carryover |
コロナの流行が長引き、予定に入れていた海外調査を実行できなかったため、旅費支出が生じなったのが次年度使用額が生じた最大の理由である。2023年度は、国内外でのリサーチを実行したい。アメリカ合衆国ボストン、ニューヘイヴン、ニューヨーク、そしてペンシルヴァニア州ベツレヘムが海外リサーチの目的地となる。もし計画が順調に進めば、英国に渡航し、ロンドン(大英図書館)、オクスフォード(ボドレイアン図書館他)における調査を加えたい。旅程に余裕があれば、ホイットフィールドを援助したハンティンドン伯爵夫人に関する資料を最近所蔵した図書館を有するケンブリッジ大学での調査も入れたいと考えている。パンデミックや世界情勢の今後の展開により、広範なリサーチ旅行が叶わない場合は、ハーヴァード大学ホートン図書館、ワイドナー図書館、マサチューセッツ歴史協会、ニューヨーク公共図書館等、ボストンとニューヨーク、ペンシルヴァニア州ベツレヘムのモラヴィア資料館など、米国内での調査に限定する。
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