2020 Fiscal Year Research-status Report
Sexuality Education in the British Romantic Era: Women, Rights, and Health
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20K00425
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 名誉教授 (30278387)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性教育 / ジェンダー / セクシュアリティ / 身体 / 健康 / 英文学 / 女性作家 / 医学的言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究目的を達成するために設けた三つのサブテーマ (a) セクシュアリティ全般に関する知識源、(b)現代的な性教育の萌芽、(c)性教育の隠された展開のうち、(a)と(b)を中心に研究を進め、研究全体の基礎を築くことに重きを置いた。 (1) (a)に関して、本研究を推進するのに必要な医学・教育関係の著書や論文を国内で購入もしくは相互貸借制度やオンラインを利用して収集し、それらの資料を分析・解読したものをデータベース化して検索可能なかたちに変え、今後の研究が容易になるように図った。なお、新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた海外での資料収集は来年度に繰り越すことにした。(b)に関しては、メアリ・ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』におけるジャン=ジャック・ルソーの『エミール』批判を身体/性教育の観点から再検討するとともに、ウルストンクラフトに影響を受けた他の女性作家たちの子どもたちに関する教育の言説を調査・考察した。 (2) 本研究に関連する研究成果として、18世紀末の女性作家プリシラ・ウェイクフィールドがウルストンクラフトのようにジェンダー平等の身体教育を唱えながら、母親の役割の考えにおいてはウルストンクラフトと一線を画したことを論じた論文を公表した。また、日本シェリー研究センターのシンポージアム(Zoom ミーティング)では、ウルストンクラフトのジェンダー観の視点からメアリ・シェリーの『最後の人間』を考察し、シェリー研究者らと意見を交換した。 なお、新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた別の学会における研究発表は来年度に繰り越された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大が継続していたため、海外での資料収集を断念したが、国内で収集した資料の精読・分析・解読などの作業を進めることにより、万全とは言えないまでも、かなりな程度まで研究基盤を築くことができた。それゆえ、(2) おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、引き続きサブテーマ(a) セクシュアリティ全般に関する知識源と(b)現代的な性教育の萌芽を中心に、本研究の独創的な視点の意義を模索しつつ研究を進め、最終年度での総括の礎を築く。 (1) (a)に関して、最新の性教育研究動向・成果を含む資料・文献・刊行物を追加収集しながら、令和2年度よりもさらに精力的に、収集した資料の精読・分析・解読に取り組み、それらをデータベース化して、研究が容易になるようにする。(b)に関しては、ウルストンクラフトが翻訳したドイツのルソー的教育者ザルツマンの『道徳の基本』(1790)を性教育史の流れの中で検討するとともに、19世紀はじめの女性作家たちの身体教育、健康教育論を取り上げ、性や生殖の言説がどのように展開されているのかを考察する。 (2) 研究成果は、学会発表、学術誌への投稿論文、共著などの形で、随時公表する
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の結果、予定していた国内外の出張旅費を全部使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 従って、次年度に使用する予定の研究費としては、前年度残金の669,869円と直接経費700,000を加えて、合計1,369,869円である。令和3年度は、研究費全体のうち、19世紀女性作家関連、身体教育・医学関連、ジェンダー・セクシュアリティ関連の書籍およびインクトナーなど消耗品の物品費として500,000円をあてる。国内外の学会発表や資料収集・調査のための旅費としては、700,000円をあてるが、新型コロナウィルス感染状況の収束が見られない場合、次年度に再度繰り越す予定である。また、謝金(英文校閲費)として、50,000円、その他の支出(論文印刷費、複写費、相互貸借文献複写費および送料)として、119,869円を使用する予定である。
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