2021 Fiscal Year Research-status Report
英語文学作品を教員養成課程用大学教材とするための基礎研究
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20K00429
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
宮原 一成 関西学院大学, 教育学部, 教授 (10243875)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英語文学 / 教職課程 / 教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語文学作品を、大学生向けあるいは中学校・高等学校向けの語学教育の教材としてではなく、教師になることを目指す学生向けの教員養成課程教材として活用する方策および方法論を探る基礎研究である。 研究の2年目にあたる2021年度もコロナウィルス禍の影響は大きく、研究活動にかなりの制限がかかることになってしまった。計画していた視察等も見送ることとなった。しかしそのなかで、英語文学のさまざまな「読み」の実践例を渉猟しながら、生徒指導などの場に応用可能な解釈法やポイントを拾い上げる実践を地道に続けた。また、成果の一部として考案した授業展開法を、勤務先の学部で担当している卒業論文ゼミにおいて試行することも実施した。ゼミ在籍学生が少数で、しかも全員が教員を志望していないという環境であったので、この試行の経緯や結果をそのまま研究論文のような形で報告とすることは、残念ながら控えた方が良さそうだと判断している。しかし、この試行から得られた感触や知見は、研究の基礎的方針確認に大いに寄与するものであった。 2021年度はコロナ禍に対応する教育業務増大のため、学会における口頭発表や活字による論文発表もかなわなかったが、それでも2本の論文原稿を完成させた。1本は、英国人作家カズオ・イシグロによる小説『わたしを離さないで』(2005年、Never Let Me Go)を、いじめを扱う学園小説として読むものである。もう1本は、やはり英国人作家であるマーク・ハッドンが2004年に発表した小説『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(The Curious Incident of the Dog in the Night-time)を素材として、特別支援の対象となる特徴を持つ青少年への接し方について教職志望学生とともに考える授業を提案する論文である。これらは2022年度前半には公表できる見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス蔓延の影響がやはり大きかった。2021年度も、調査出張や学会出張はすべて計画を中止せざるを得なかった。また、勤務する大学でも、オンライン授業化への対応、さらに秋以降は対面授業とオンライン授業のハイブリッド化への対応などに相当な時間を費やすこととなった。研究のための時間は予定の三分の一もとれず、公刊論文ゼロという、自分でも歯がゆい結果となった。それでも、論文原稿を二本分脱稿することはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、脱稿済みの論文を早い機会に公刊し、さらには事例研究的論文を2本程度、年度内に完成・発表することを目指す。2022年度も研究環境はやはり厳しい状態が続くことが予想される。コロナウィルス禍が早期に落ち着いてくれることに期待をかけるしかないのだが、もし事態が大きく好転したならば、文学研究や文体論研究の学会に積極的に参加することで、文学読解の新しい実践例を吸収したり、成果発表を行って自分なりの実践の妥当性を批評にさらしたりしていきたいと考えている。それが困難な状況であれば、文学作品を自分で読解・考察し、そこで考えついたことを、少人数ではあるが勤務校の学生たちに伝達し、その反応を確認するという、2021年度に行ったような研究活動を継続することになるだろう。同時進行で、本研究の総括も進めていく。 一方で、科研費応募当時に計画していた教育現場視察、すなわち医学教育に文学を活用することにおいて先進的実践を行ってきた英国あるいは米国の大学の教育の実際を視察することについては、非現実的として断念する方向で考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度も、学会出張や調査出張が全くできず、旅費の使用額がゼロとなった。 2022年度には、海外への視察出張はおそらく断念することになりそうだが、可能であれば主に国内移動のために旅費を活用し、積極的に文献渉猟の調査旅行や学会参加を実施する予定である。また、コロナ禍がまだ続くようであれば、研究室内で文献調査をする活動を主体にすることになるが、そのためにはまだまだ文献購入が必要であり、その費用に本研究費を充てていきたい。
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