2022 Fiscal Year Research-status Report
英語文学作品を教員養成課程用大学教材とするための基礎研究
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20K00429
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
宮原 一成 関西学院大学, 教育学部, 教授 (10243875)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 英語文学 / 教職課程教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語文学作品を、大学生向けあるいは中学校・高等学校向けの語学教育の教材としてではなく、教師になることを目指す学生向けの教員養成課程教材として活用する方策および方法論を探る基礎研究である。 研究の3年目にあたる2022年度だが、主な成果は研究論文の公表という形となった。科研費申請当初計画していた視察等は、コロナウィルス禍の影響により断念し、英語文学研究の分野、および本邦の国語教育における文学教材研究の分野から、さまざまな「読み」の実践例を渉猟し、生徒指導などの場に応用可能な解釈法を模索し続け、その結果として2本の研究論文を完成させた。具体的に言うと、1本は、英国人作家カズオ・イシグロによる小説『わたしを離さないで』(2005年、Never Let Me Go)を、いじめを扱う学園小説として読むものである。もう1本は、やはり英国人作家であるマーク・ハッドンが2004年に発表した小説『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(The Curious Incident of the Dog in the Night-time)を素材として、特別支援の対象となる特徴を持つ青少年への接し方について(そしてひいては、思春期によく見られるような一定の内向性を持つ健常者青年への接し方について)、教職志望学生とともに考える授業を提案する論文である。これらは2022年度末の研究紀要誌上にて公開した。 また、1本目の小説に関しては、ある部分を「同級生によるいじめ目撃報告」として捉える観点を追究するなかで、報告者が自分の関わりを軽く見せかけるため報告内で時系列を改変する、という現象に着目したのだが、この問題をクローズアップすることで、同作品に関する別の論文執筆にもつながった。これも2022年度末刊行の研究紀要で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は研究の最終年度であったが、コロナウィルス禍の影響が大きく、最終年度にふさわしい総括を行う時間的余裕はなかった。コロナウィルス禍の影響が大きかった。研究期間を一年延長した所以である。 遅れているとは言え、一定の成果は上げられたように思う。上記に挙げた実績の他、コロナウィルス蔓延の影響がある程度沈静に向かったため対面形式で開催された学会への出張を、2022年度末までに2回行うことができた(調査出張は実施しなかったが)。日本英文学会関西支部大会では、登場人物の家庭環境に対する時代風潮の影響度の見定め方につながる知見を得ることができた。現在は、それをマーティン・ブーバーの教育論と関連付ける方策を考え、口頭発表用の論考にまとめる作業の途中である。 そして福岡現代英国小説談話会例会では、カナダ人作家マーガレット・アトウッドの代表作『侍女の物語』(1985年、The Handmaid's Tale)を批評的に再読する研究に触れ、それを契機に、同作家による1988年の小説『キャッツ・アイ』(Cat's Eye)を、本研究の材料にする着想を得た。画家である主人公が描く美術作品は自身の過去の体験を素材にしている。そこから、作品中に詳述される美術作品のありようを読みとり、それを、描き手である主人公の記憶に巣くう体験への思いへつなげるような読みを指導し、それを臨床心理分野でいう描画の分析と絡めて考える教育的素材とすることを提案できると感じられたのである。この着想を論文という形にすることが、研究期間を延長した次年度の当面の目標となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長の結果、最終年度となる2023年度には、科研費応募当時に計画していた教育現場視察、すなわち医学教育に文学を活用することにおいて先進的実践を行ってきた英国あるいは米国の大学の教育の実際を視察することについては、完全に断念し、これまでの成果を具体的な形でまとめ発表することに力を傾注する予定である。 まずは、口頭発表を国際文体論学会年次大会で実施し、これを成果発表の一つとする予定である。また、上記の着想に基づく『キャッツ・アイ』(Cat's Eye)に関する論文を早い時期に完成させたい。次いで、文学研究や文体論研究の学会に積極的に参加することで、文学読解の新しい実践例を吸収したり、成果発表を行って自分なりの実践の妥当性について評価を受けたりしていきたいと考えている。そのための旅費を効果的に利用したい。 さらに可能であれば、着想した内容を勤務校の学生たちに伝達し、その反応を確認するという、2021年度に目指したような研究活動を実践に移したい。そして、最終年度にふさわしく、本研究をまとめる論文を別途執筆したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス禍の影響で、当初計画で予定していた海外出張が実施できなかったため。 2023年度には、視察出張は断念する計画であるが、国内および国外での学会参加のため旅費を活用し、積極的に文献渉猟の調査や学会発表を実施する予定である。また、研究室内で文献調査をする活動は終盤になっているが、まだ文献購入が不足していることもあり、その費用にも本研究費を充てていきたい。
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Research Products
(3 results)