2023 Fiscal Year Research-status Report
Literary Dilemma in Post-war thinking: A Comparative Study of Southern American Literature and Modern Japanese Literature
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20K00434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 和彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10205594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ南部文学 / 近代日本文学 / 戦後的思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は南北戦争以後のアメリカ南部文学史を、W・シヴェルブシュの言う「敗北の文化」の所産、すなわちきわめて息の長い「戦後文学」の系譜としてとらえ、同時に同じ「敗北の文化」の所産として、先の大戦における敗北以降は言うまでもなく、近代以降の日本文学全体を通覧する一般的観点に依拠することによって、ふたつの「戦後文学」の比較考察の視座を確保してきた代表研究者のこれまでの研究成果を継承するものである。特に今回の研究においては、これまで南部文学と近代日本文学とがいずれも「戦後文学」ないし「敗北の文学」と呼びうる根拠と併せて指摘してきた両文学の相違に着目し、同じ「敗北の文化」の所産としての両文学の瞠目すべき肌合いの違いについて、それぞれの文学の直接的な背景にある両者に共通の思考様態を、戦前と戦後、ふたつの真実と正義のあいだに引き裂かれた一種のディレンマとして見据え、同じディレンマにおける強度の差を両文学のこの差異の根幹にあるものと仮説的に見なし、その強度の差を生み起こしている様々な要因をそれぞれの文学の特徴を顕著に有する作家たちの文学のうちに検証することで、その作業仮説の有効性を問うことを目標とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の根幹にある作業は、研究目的に示した作業仮説の有効性を、アメリカ南部文学ならびに日本近代文学のさまざまな作家・作品に検証することで、それぞれの作家・作品に独自に揺曳させる「戦後性」について、その周辺にある歴史的・伝記的文献を広く国内外に収集・吟味・比較検討するところにあったのだが、新型肺炎流行という事態にあい、現地におけるリサーチを自由に行うことが困難となり、かつまた現地における学会・研究会への参加、共同研究者ないし研究アドヴァイザーとして期待していた人物との交流や意見交換を必ずしも計画通りには進捗させられなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
4箇年にわたって計画された本研究は、それぞれの年度に基本的に取り扱うべき作家たちをおおまかに時代順にわりふっていたのだが、それぞれの時代区分にあって、研究進捗状況に示した理由による研究の遅れによって、必ずしも十分に取り扱えなかった作家があり、それらをあらためて本研究の目的に照らして検証する作業を継続しておこないながら、続いてアメリカ南部文学ならびに日本近代文学における「後発近代性」という視点を導入して行う予定の新たな研究(昨年度中に新たな科研費を申請し、このたび採用決定の通知を得た)との融合を目指して、両文学における「戦後性」のより立体的な姿を析出する努力を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型肺炎の流行により、特に国内外の研究施設でのリサーチが計画通りに実行できず、また学会・研究会への参加も制限され、現地で共同研究者ならびに研究アドヴァイザーと直接の交流がはたせなかったため、予算計上していた旅費がほとんど使用できなかったため。今後、この期間果たせなかったアメリカ合衆国の特に南部地域の大学ならびに所属研究施設における資料収集、国内外の共同研究者・研究アドバイザーとの交流を積極的に行う予定である。
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