2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石原 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00368185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 航空映画 / ハワード・ホークス / ウィリアム・ウェルマン / ハワード・ヒューズ / キング・コング / 飛行文学 / ハリウッド / 1930年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、戦間期のハリウッドにおける航空映画の調査研究を実施した。中でも「ビッグ・スリー」と呼ばれる三つの戦間期航空映画に注目し、そこで表現される人間と飛行機の身体の問題を掘り下げて検討した。第一回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、航空映画への熱狂に火を付けたウィリアム・ウェルマン監督の『つばさ』(Wings,一九二七年)については、飛行機という空を躍動する身体の陰に隠れる操縦士の身体に運命づけられた悲劇を中心に分析を行った。また、航空界と映画界を股に掛けて活躍した大富豪ハワード・ヒューズ監督による戦間期最大の航空映画『地獄の天使』(Hell's Angels,一九三〇年)に関しては、飛行機という機械の身体と、人間という生身の身体が、あたかも入れ替わってしまったかのような同作を、戦間期というアメリカ最大の飛行機熱の時代を最も良く象徴する映画として検討した。さらに、巨匠ハワード・ホークス監督の『暁の偵察』(The Dawn Patrol,一九三〇年)については、同作が戦間期を代表する航空映画と目されながら、「飛行機」ではなく「人間」を描くことで、後の航空映画への扉を開いた希有な作品として考察した。加えて、本研究では、名画『キング・コング』(King Kong, 一九三三年)を戦間期に花開いた航空映画に見立て、飛行機を主役に据えた航空映画というサブジャンルが本質的に抱える矛盾を明らかにした。当初、これらの成果は2021年度に研究論文として、共著書に出版される予定であったが、コロナ禍の影響などで共著書の出版が遅れてしまい2022年度内に持ち越されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、アメリカでの資料収集を実施することは2021年度も出来なかったが、既にオンライン書店などを通して入手していた第一次大戦と第二次大戦の戦間期(特に1930年代)の航空映画の分析に研究活動の大半を充当し、予定通り研究は進展した。ただし、出版に関しては、若干の遅れが生じている。同研究成果は当初、2021年度中に共著書の一部としての出版を予定し、原稿も仕上がっていたが、最終的にはコロナ禍の影響や共著者の原稿の遅れなどが理由で書籍の出版自体が後ろ倒しとなり、残念ながら2022年度内に持ち越されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年に予定されていた共著書の出版は2022年度に実現するはずである。また、2022年度は戦後のアメリカ航空文学の代表者であるErnest Gannの代表作 Fate Is the Hunter(1961)の分析を中心に進め、論文をまとめていく予定である。また、8月にはアメリカでアメリカ文学関連の学会発表も予定されており、その機会を利用して、コロナ禍の中、実施できなかったアメリカ航空文学関連の資料の収集を集中的に進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会発表や資料収集の為の旅費の支出が全く発生しなかったため。2022年度は8月に学会出張や資料収集のための海外旅費が発生する予定があり、使用が増えることが見込まれる。
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