2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石原 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00368185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 航空映画 / ハリウッド / Edgar Allan Poe / John Wise / King Kong / 飛行文学 / Howard Hawks |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、21年度中から研究を進めていた戦間期のハリウッドにおける航空映画の調査研究を論文「飛翔する身体-戦間期アメリカ航空映画考」として執筆し、共著書『モダンの身体-マシーン・アート・メディア』(小鳥遊書房)の第3章として発表した。内容は、「ビッグ・スリー」と呼ばれる三つの戦間期航空映画、具体的には、第一回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、航空映画への熱狂に火を付けたWillam Wellman監督の『つばさ』(Wings,一九二七年)、航空界と映画界を股に掛けて活躍した異端児Howard Hughes監督による戦間期最大の航空映画『地獄の天使』(Hell's Angels,一九三〇年)、巨匠Howard Hawks監督の『暁の偵察』(The Dawn Patrol,一九三〇年)を中心に、飛行機と身体性の関係についてついて分析した。加えて同時期の映画『キング・コング』(King Kong, 一九三三年)を戦間期に花開いた航空映画に見立て、飛行機を主役に据えた航空映画というサブジャンルが本質的に抱える矛盾を明らかにした。 他に手掛けた研究としては、19世紀のアメリカにおける気球をめぐる言説の分析である。特に、気球飛行士John Wiseの自伝や、作家Edgar Allan Poeが新聞に発表した大西洋気球飛行のホークス(人担ぎ)記事“Balloon Hoax”(1844年)に注目し、19世紀のアメリカ人の心をとらえた気球による大西洋横断飛行と西漸運動の関係を特にナショナリズムとの観点から考察した。同研究の成果は、青山学院大学の若林麻希子教授が主催する「逆走文学の系譜研究会」における講演「逆走する気球文学-大西洋横断飛行への夢」という形で発表した(2023年3月13日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出版が遅れていた戦間期アメリカ航空映画に関する論文がようやく22年秋に出版され、進展を見た。さらに、以前から計画していた19世アメリカ気球文学に関する論考についても、集中して取り組むことができ、3月に講演の形でまとめることができた。(いずれ同内容は論文として発表する予定。)コロナ禍の影響で現地調査は実施できていないものの、19世紀の気球関連の必要資料はオンライン等でおおむね入手可能であったことから、全体としては遅滞なく研究をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に講演の形で発表した「逆走する気球文学-大西洋横断飛行への夢」については、学会誌等に発表する予定である。加えて、2023年度は戦後のアメリカ航空文学の代表者であるErnest Gannの代表作 Fate Is the Hunter(1961)の分析を中心に進めていく計画である。成果は、各種関連する学会や研究誌で発表していきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも19世紀の気球関係の資料がオンラインで入手できることが判明したため、資料調査のための旅費支出が抑えられたため。2023年度は国内出張も複数予定しており、使用が増えることが見込まれる。
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[Book] モダンの身体2022
Author(s)
中村 嘉雄、小笠原 亜衣、塚田 幸光
Total Pages
376
Publisher
小鳥遊書房
ISBN
9784909812988