2021 Fiscal Year Research-status Report
How culture can be successfully introduced to bring inter-ethnic harmony: Learning from the Tlingit cultural emissary, Nora Marks Dauenhauer
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20K00438
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 千恵子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (10305691)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アラスカ先住民族 / クリンギット(トリンギット) / ノーラ・マークス・ダウエンハウアー / 口承物語 / 地名研究 / 先住民由来の地名 / 民族共生 / 文化の発信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アラスカ先住民族クリンギット(トリンギット)の作家・言語文化研究者ノーラ・マークス・ダウエンハウアー(1927-2017)による伝統文化の解説が「白人」による異文化理解をなぜ促進できたかを明らかにするものである。 クリンギット文化の中でも特に精神文化について分かりやすく伝える手段が口承物語である。2021年度はダウエンハウアーによる口承物語研究について、その独自性と革新性を明らかにした。『わたしたちの祖先』(1987)を含む、夫リチャード・ダウエンハウアーとの共著は①先住民の視点から見た内容の正確性、②口承物語の文学としての価値の確立という二点を大きな特徴とする。たとえば、従来の文化人類学分野では、口承物語の内容要約が英語で示されるのみだった。これに対して、ダウエンハウアーはクリンギット語で語られた物語を正確に記録し、語義や文法、文化的・社会的背景等を詳述した上で物語の意味やテーマを解説した。また、口承物語を子ども向けにリライトすることが民族の知的・精神的価値の否定につながると説き、口承物語の文学的価値を解説した。これらの研究の独自性を、クリンギット口承物語研究動向に関する論考の中で明らかにした。 また、ダウエンハウアーの文化発信を成功に導いた一因が地名研究にあると考え、その内容と社会的影響をエコクリティシズム研究学会で発表した。アラスカ南東部で展開される地名研究は現在までに3400以上のクリンギット語地名を収集している。解明された地名の歴史的、文化的、地勢学的意味がクリンギット語地名の価値を裏付け、地域住民の関心を高めてきた。その結果、地名や学校名が続々と先住民地名へと変更され、その社会変化がさらにクリンギット文化への理解と評価を深めるという循環を生んできた。地名研究がダウエンハウアーの文化発信と両輪となって文化理解促進に貢献していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、アラスカ南東部の研究機関での資料収集作業が必要となる。具体的には、Sealaska Heritage Institute (SHI)、Alaska State Museum及びUniversity of Alaska Southeastが所蔵する、ダウエンハウアーの著書以外の著述資料――新聞記事、雑誌記事、ガイドブック等のための解説、講演やラジオのスクリプトなど――を収集して解析することが必要である。しかし、2021年度も米国における新型コロナウィルス感染症の状況が、研究代表者の本務校における渡航許可レベルに至らなかった。 SHIの所蔵資料はオンライン検索が可能であるものの、すべてが検索できるわけではなく、また閲覧には資料請求が必要となる。そのため資料入手に時間を要し研究が予定より遅れている。 2021年度は2022年度の予定を前倒しする形で研究成果の発表を重点的に行った。2022年度は資料収集と解析を集中的に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
米国における新型コロナウィルス感染症の感染拡大状況を見ながら、2022年9月または2023年3月に現地での資料調査を行う予定である。これが難しい場合には現地調査を次年度以降に先送りし、Sealaska Heritage Institute (SHI)、Alaska State Museum及びUniversity of Alaska Southeastから可能な範囲でのダウエンハウアーの著述資料の取り寄せと解析を行う。研究成果は12月の多民族研究学会で発表し最終報告書によってまとめる。まとまったデータ量をもとにして研究論文を2022年度から2023年度にかけて完成させ、2023年度に投稿を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度も米国において新型コロナウィルス感染症の拡大が続き、研究代表者の本務校からは研究のための渡航許可が下りなかった。そのため外国旅費分として計上していた額を使用しなかった。今後は感染拡大状況や社会状況を見ながら、2022年9月または2023年3月にアラスカ州での資料調査を実施し、繰り越された外国旅費相当分を渡航費と現地宿泊費に充当する。その他の予算は、現地の各研究機関への資料請求と取り寄せ費用、及び図書と物品購入費に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)