2020 Fiscal Year Research-status Report
英雄像の創造と受容ーロジャー・ケイスメントをめぐるテクスト研究
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20K00443
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中村 麻衣子 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (50780615)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英文学 / アイルランド文学 / セクシュアリティ / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はアイルランド出身の活動家で現在では建国の英雄のひとりと目されるロジャー・ケイスメントが、①いかにそのイメージを確立し、現代まで受容されてきたのかを一次資料分析を通じて明らかにすることと、②未だ大きな存在としてグローバルに再生産されているのはなぜなのかという問いを考察することにより、ナショナリズムの英雄として単なるヒロイズム礼賛にとどまらないその人物造形を明らかにし、偉人のイメージ創造のあり方を発展的に検証することである。 令和2年度は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、日本からの出国およびイギリス、アイルランド両国への入国が不可能となったため①の研究の根幹となる現地での一次資料収集と調査が不可能になった。そのため当初の研究計画の予定を変更し、②の基盤となる死後にケイスメントをテーマ、モチーフとした文学作品の分析に重点を置いて研究を行なった。主として2000年以降、そのセクシュアル・アイデンティティが明らかになってから量産されたケイスメント像の再構築を検証すべく、マリオ・バルガス・リョサなどの作品における表象分析を行った。 またケイスメント自身の著作である詩や日記のテクスト研究を行った。中でも長年議論の的になってきた日記における同性愛に関する言説に着目し、アイルランドにおけるセクシュアル・マイノリティの在りかた、またクィア文学との連続性についての考察を進めた。新たな資料の収集や分析を行うことが困難だったこともあり、作品分析をもとにした研究発表、論文執筆まで至らなかったことが反省点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により現地の図書館やアーカイブでの調査が行えなかったため、全体の方針は変わらないものの、予定の変更を余儀なくされたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では現地での調査がいつから可能になるかが不明である。そのため研究計画が予定通りに実施できるかは現時点では不明ではあるが、国内で入手可能な資料とこれまで進めた文学作品分析に基づいて研究を実施し、研究成果をまとめたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は海外への出張、調査が実施できなくなったことである。イギリス、アイルランドへの渡航が可能になり次第、調査計画を組み直して当初の遂行する予定である。
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