2023 Fiscal Year Research-status Report
人種主義を問い直す:アンドレア・レヴィとゼイディ・スミスの作品の考察
Project/Area Number |
20K00444
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
齊藤 みどり 都留文科大学, 文学部, 教授 (30759858)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 比較文学 / 英語圏文学 / カリブ海域文学 / ポストコロニアル文学 / ポストコロニアル批評 / フェミニズム批評 / 植民地主義 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、本年度も人種主義についてカリブ海域出身の作家の作品を中心に研究を進めた。昨年度に考察できなかったゼィディ・スミスの作品『美について』を中心に、引き裂かれた女性たちのつながりについて調査をした。 その結果については、2023年7月7日De Montfort University, Leicesterで開催された国際学会Society for Caribbean Studies 46th Annual Conference にて‘Female Friendships in Zadie Smiths' On Beauty(2005) and NW(2012)’として発表した。本来なら学会参加には渡英する必要があったが、家庭の事情があり渡航が困難となったため、参加を諦めていたところ、急遽オンラインの参加を認められて発表が叶った。その結果については、都留文科大学比較文化学科三十周年記念論集『共生と記憶の比較文化論』(春風社)に、「There is such a shelter in ourselves――ゼイディ・スミス『美について』を中心に――」としてまとめた。 論文では、キャンパスノベルという体裁をとりつつ、スミスは大学における男性中心の権威主義を批判し、ハイチからの移民の姿を通して、アメリカの大学における多文化主義の失敗を表現していると考察した。また、文学や芸術、詩などがもつ脱中心化の力をスミスは高く評価し、人文学の重要性を訴えていると論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遅れていたゼィディ・スミスの研究に着手することができ、また作品について気になっていたことを論文の形にしてまとめることができたので、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼィディ・スミスの他の作品にも2人の女性を主人公としたものが複数あるため、彼女の作品のさらなる考察を進めたいと考えている。また、スミスは最近環境問題にも関心を示しているが、それがどのように作品に影響しているかを調査したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために海外出張に行けず、本年度も家庭の事情で国際学会への参加のために海外に渡航ができなかったため。本年度の使用計画としては、必要な文献を揃え、できたら国内外の学会に参加するか、もし可能であれば海外に資料収集に渡航したい。
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