2021 Fiscal Year Research-status Report
海洋国家アメリカの文学的想像力:19世紀ミンストレルの文学表象と海外輸出
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20K00458
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中西 佳世子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (10524514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナサニエル・ホーソーン / 『アフリカ巡航日誌』 / 海軍艦上劇 / ミンストレル / マシュー・C・ペリー / リベリア / 笑いと権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はミンストレルが内包する差別的な笑いの構造とその海外進出における文化的戦略との関係を考察しようとするものであるが、今年度は、ペリーのアフリカ艦隊と日本遠征艦隊の接点に注目した。両艦隊を通してペリーと接点を持つホーソーンは『アフリカ巡航日誌』の編纂においてミンストレル的な笑いを構築している。一方、ペリーは日本遠征においてミンストレル・ショーの笑いを利用して支配/被支配を前提とする「友好関係」の構築を図っている。19世紀中葉アメリカを代表する作家ホーソーンと海軍士官ペリーによるミンストレルの利用とその差別性に対する意識の希薄さはアンテベラムのアメリカにおける人種問題を浮き彫りにするといえる。以上の内容に関する本年度の研究実績は以下の通りである。 1)『アフリカ巡航日誌』の翻訳。昨年度に引き続き、高尾直知氏(中央大学)と大野美砂氏(海洋大学)と研究会をオンラインで行い、令和4年10月の出版準備を進めた。解題の執筆に際し、Donald L. CanneyのAfrican Squadron: The U.S. Navy and the Slave Trade, 1842-1861 、その他、ミンストレルに関する文献の読み込みを行った。 2)令和4年10月に開催される日本アメリカ文学会全国大会で「HawthorneとPerryのミンストレル-Journal of an African Cruiser と日本遠征」での発表を行うこととなっており、その準備を進めている。 3)令和3年12月開催の日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部研究会例会のシンポジウムで「揺らぐ家庭とホーソーンの炉辺ー『七破風の屋敷』を中心に」の発表を行った。本発表では『アフリカ巡航日誌』でも言及される奴隷労働の産物としてのコーヒーが、階級、人種、ジェンダーの問題を呈示するモチーフとなっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で出張が不可となり予定していた調査を行うことができなかった。一方、文献の読み込みが進み、新たな文献収集でも成果があった。これらを総合し、全体としてやや遅れているという状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
感染拡大の状況に改善が見られた場合、予定していた出張調査を行う。思うように出張調査ができない場合でも、学会へのオンライン参加、資料の読み込みなどを進め、学会発表、論文投稿を行う。また関連研究の出版を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で出張が不可となり予定していた調査を行うことができなかったり、学会がオンライン開催となり交通費が不要となったため次年度使用額が生じた。次年度の使用計画は以下のとおりである。 タブレット端末、付随品、PCサプライ、プリンターなど 350000円、出張調査/学会出張費 300000円、書籍等資料費 100000円、英文校正10000円、コピー10000円、人件費 30000円、出版献本 50000円
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Research Products
(2 results)