2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00460
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高村 峰生 関西学院大学, 国際学部, 教授 (90634204)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ディストピア / マーガレット・アトウッド / ジョージ・オーウェル / アダム・ロバーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は主として現代の北米において書かれたか再受容・翻案されたディストピア作品の特質を検討し、そこに描かれた権力や欲望の体制について比較文学的な見地から考察を加えることである。2022年度は、依頼による論文執筆が多く、その中には本研究課題と関係のないものも多かったため、本研究課題の進捗が遅れることとなった。しかし、そのなかで、2022年9月に亡くなった映画監督ジャン=リュック・ゴダールについての論「ゴダールにおける手の表象と「死後の生」――出来事とマシンの結び目をめぐって」は、彼の作品におけるホロコースト表象をめぐるものであり、現代におけるディストピア表象との関連で執筆することができた。 また、まだ未刊であるが、マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』のドラマ版についての執筆を共著において執筆することができた。これは1980年代のアトウッドのディストピア小説が現代の文脈において、どのように受容され、映像化されているかということについての論文である。この中で、著者は、三人の女性登場人物に注目し、彼女がどのように権力とかかわりながら、代理母、代理出産という問題に直面しているかということについて論じた。このことを通じて、現代のディストピアがフェミニズム運動と密接に関連することを明らかにしたのみならず、生殖や性の問題とも深く結びついていることを示すことができた。 このほか、AIなどの最先端の科学技術とディストピアとの関連も当初から研究課題の一つであるが、Adam RobertsなどのイギリスのSF作家による作品を読み、彼らの描き出す、人間とAIの接続した社会における身体的な感覚の衰退について、準備的な考察を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現代のディストピア小説についての全体像をとらえようとする計画そのものが大きすぎたせいもあるが、前述のように執筆依頼が重なり本来の研究課題に集中することができず、研究の成果が断片的なものにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の最終年である本年は、新たなトピックを追究するよりは、単著執筆のために総合的な研究を行いたい。2023年4月から2023年9月までサバティカルでイギリスに滞在していることもあり、集中的に仕上げていきたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究での出張ができないことがあった。
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