2021 Fiscal Year Research-status Report
マグレブにおける社会変革と仏語表現文化:グローカリズム時代の市民的愛国意識の創生
Project/Area Number |
20K00463
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 北アフリカ / マグレブ / アルジェリア / 日本マンガ / マンガ創作 / 市民運動 / 社会変革 / 異文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、社会変革への機運が市民から高まり、その実現までの模索の途上にあるマグレブ地域について、文化的表現活動と市民的社会構築の動きとの関係を、とりわけマンガ創作と文学を通じて注視することがこの研究の指針であるが、2年目の令和3年度は、Covid-19の影響下で現地への渡航はできなかったものの、着実に研究を進展させることができた。 研究を通じて対象地域の文化の発展に貢献するという学問の行動論的な意義を重視する本課題にとって重要な成果として、第13回アルジェ国際マンガフェスティバル(略称FIBDA、2021年12月22-26日開催)に、オンライン開催ながら以下の企画の主宰者として参加したことがあげられる。青柳悦子、山本美希(筑波大学准教授・漫画家)、横井三歩(漫画家)、カリム・セルグア(アルジェ芸術大学教授)「ゲートゥエイ:アルジェリア漫画と日本“マンガ”をつなぐ」12月25日実施、3時間。この催しでは、筑波大学芸術専門学群の学生とアルジェ芸術大学の学生が参加して創作アトリエを通じた交流を実現させることができた。また日本からはほかに2名の漫画家の参加協力も得ることができ、今後の両国の文化交流の礎を築いたと考えている。 論文としては、アルジェリアのマンガ創作をめぐる分担著論文(「日常の表現の渇望と国民共生意識の醸成」、『日常のかたち』所収予定)、およびアルジェリア生まれの作家カミュをめぐるフランス語論文(近刊)を執筆した。ほかにアルジェリア・マンガについては中東をめぐる刊行書のコラムでの紹介もおこなった。 口頭での実績としては、カミュをめぐる国際シンポジウムでの発表1件のほか、公開講座2件、およびアンスティチュ・フランセ東京主催の国際イベント「カミュの響き」(2021年11月23日)で、アルジェリアを描く仏漫画家フェランデスと日本の小説家中村文則氏の対話をオーガナイズした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響により、研究初年度(令和2年度)にひきつづき、本年度も海外渡航は不可能な状態であったため、現地での資料収集や直接交流は実現できなかった。またCovid-19対応のために本課題初年度(令和2年度)中、大学教員として忙殺された影響は大きく、全般的に研究課題の進捗は計画から、少なくともほぼ1年遅れの状況である。 とはいえ、オンラインで可能な情報交換やイベント開催を本年度は実現させることができ、また研究成果発表については、論文執筆・口頭発表の両面でかなり充実した活動を展開することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の点に力を入れていく。 1)北アフリカとくにアルジェリアの社会情勢とその背景分析。アルジェリアの画期的な市民運動として着目された2019年2月からの「ヒラク」運動(毎週の平和的市民デモ)は2020年春から2021年春までのCovid-19による外出禁止令による中断の後、結局、衰退に向かった。この歴史的背景としてこれまで世界的な着目度が低い、独立後のアルジェリアの政治的・社会的状況についての理解を深め、また、2020年以降現在の国際的・国内的情勢について展望を得る。 2)マンガ作品の研究。アルジェリアで創作されたマンガ作品について、テーマ的・内容的な分析のほか、創作活動をめぐる状況、受容の特質などの面からの研究を進める。また、チュニジア、モロッコにも目を向ける。 3)文学作品の研究。アルジェリアなどマグレブ地域の中で、現地発の作品がもつ意味を注視しながら2000年以降に発表された作品の研究をおこなう。 4)現地との交流活動。アルジェリアのマンガ関係者(オーガナイザー、創作者など)との交流を継続的に展開するとともに、日本の文化人との交流の場を企画する。現地の作品に日本人がアクセスする方法について模索する。
|
Causes of Carryover |
Covid-19感染対策のため、国内外の移動を自粛せざるを得なかったため、使用額は物品費に限られた。 とりわけ海外渡航が可能になったら、アルジェリアなどへの渡航費・滞在費として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)