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2021 Fiscal Year Research-status Report

Considerations, from the Perspective of Translation Studies, Regarding the History of German Translation Theories and Its Relationship to the History of German Thought

Research Project

Project/Area Number 20K00466
Research InstitutionTokyo University of Foreign Studies

Principal Investigator

山口 裕之  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40244628)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsドイツ翻訳思想 / 翻訳理論 / トランスレーション・スタディーズ / ドイツ的
Outline of Annual Research Achievements

ドイツ翻訳思想の系譜をたどる研究では、シュライアーマッハーの翻訳論にとりわけ顕著に表れているように、起点言語とその文化的特質における「異質」なものをあえて引き受けるような翻訳のあり方(それによって「自然さ」が損なわれるとしても)をある種のドイツ的な特質・現象として位置づける議論がしばしば展開されている。このことは、トランスレーション・スタディーズにおけるポストコロニアル的視点と密接に結びついているが、トランスレーション・スタディーズにおけるこのドイツ翻訳思想の問題を考えるためにとりわけ重要な論点は、「ドイツ的」なものをめぐる言説についての議論が、戦後のドイツにおいては一種のタブーとなってきたという事態である。それによって、ドイツ翻訳思想における「ドイツ的」特質を浮かび上がらせるという課題が、ドイツ以外のところでしか展開し得なかったのではないかという、ある種の逆説的な状況が見えてくる。2021年度は主にこの問題について取り組み、論文「負の烙印のはじまりについて―「ドイツ的」なものの意識形成と翻訳理論研究」(東京外国語大学総合文化研究所『総合文化研究』第25号)で、その成果をまとめた。
次年度以降もさらに、第二次世界大戦後にある種の抑圧の対象となった「ドイツ的」なものについての言説の歴史的展開をたどりつつ、外部の「異質」なものによって明確となる「ドイツ的」なもののナショナリズム的意識と翻訳をめぐる思考との関係について考察を進めてゆきたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2年目となる2021年度は、ドイツ翻訳思想においてしばしば言及される「ドイツ的」特質について取り上げることがそもそも難しい、「ドイツ的」言説をめぐる歴史的状況に光を当てて研究を進めた。このことは、一見、ドイツ翻訳思想におけるドイツ的特質を浮かび上がらせるという課題からすればある種の迂回であるようにも見えるかもしれないが、実はこのことはドイツ翻訳思想そのものにとって本質的な現象でもある。このような逆説的状況に置かれたドイツ翻訳思想、およびそれを語る言説の状況について、ひとまずは論文「負の烙印のはじまりについて―「ドイツ的」なものの意識形成と翻訳理論研究」(東京外国語大学総合文化研究所『総合文化研究』第25号)でまとめることができた。この研究は、次年度以降さらに「ドイツ的」なものをめぐる言説の系譜とそれを取り巻く状況から翻訳思想そのものの特質を描き出す研究のためのステップとなっている。

Strategy for Future Research Activity

「ドイツ的」なものをめぐる言説の系譜をたどる作業をさらに続けてゆくことになる。この問題は、ドイツのナショナリズム形成の思想史をたどる研究の一翼を担うものとなるが、それを翻訳思想という視点から行うことにこの研究の特質がある。そのために第二次世界大戦後の「ドイツ的」なものをめぐるある種の抑圧の状況につき、とりわけ「ドイツ文学(Germanistik)」というアカデミックな制度に関して、そのことを検証してゆきたい。本来ならば「ドイツ的」なものを浮かび上がらせるはずの国民文学研究だからである。この目的のために、コロナの状況下で可能であるならば、ドイツでの研究者およびギムナジウムでの歴史教育に関わる教員への聞き取り調査も実施したい。
他方で、翻訳思想に関わるテクスト分析も併せて進めてゆく。フィヒテの『ドイツ国民に告ぐ』は、一般に翻訳論に関わるテクストとして扱われることはほとんどないと思われるが、このテクストで議論される言語とドイツ的意識の問題に2022年度はとりわけ努力を傾注したい。

Causes of Carryover

もともとドイツでの調査のための出張を予定していたが、コロナ禍でそれが困難であったために、2021年度の実施は見送ることにした。必要な書籍の購入をおこなったが、それだけでは予算が大幅に余ることになった。
次年度には予定していたドイツでの研究調査を実施したい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 負の烙印のはじまりについて―「ドイツ的」なものの意識形成と翻訳理論研究2022

    • Author(s)
      山口裕之
    • Journal Title

      総合文化研究

      Volume: 25 Pages: 69-83

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2022-12-28  

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