2020 Fiscal Year Research-status Report
革命期-1920年代ロシアにおける人間と物との関係の再構築
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20K00474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 正則 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (10346843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロシア / 哲学 / 思想 / 文学 / 科学技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、革命期―1920年代ロシアのさまざまな分野において、西欧近代的な物質観がいかに批判され、物にたいするどのような新しい見かたが生じつつあったのか、その諸相を跡づけた。とりわけ、ボリシェヴィキの理論家ボグダーノフの哲学・思想、「プロレトクリト」におけるプロレタリア芸術理論、構成主義・生産主義芸術者の芸術理論を主要な検討対象とした。 まず、ボグダーノフについては、前期の哲学「経験一元論」と後期の統一科学「テクトロギヤ」との関係、また「プロレタリア文化論」と「テクトロギヤ」との関係を子細に分析することによって、ボグダーノフの思想において、人間を自然を克服し支配するものとみなす人間中心主義的人間観と、世界を人間をその一部として包摂する全体的システムとみなす反人間中心主義的世界観という一見矛盾する二つの人間観・世界観が、いかに矛盾しながら併存するとともに、いかに連関しあって統一的な思想体系を構築しているのか、両者の関係が時期によってどのように変化したのか、を解明した。 また、ボグダーノフとプロレタリア詩人・技師ガスチェフ、生産主義芸術理論家アルヴァートフの芸術理論を、とりわけ新たな芸術の形式と素材の観点から比較検討することによって、物にたいする新たな見かた、人と物との新たな関係性の模索が、プロレタリア芸術の理論に顕著に表出していることを明らかにするとともに、表層の用語法の類似性にとどまらない三者の人間観・物質観の共通性と差異とを明らかにすることができた。くわえて、構成主義・生産主義芸術理論について、その演劇理論を分析することによって、その人間観とりわけ身体観の特徴を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、国内の大学図書館での「資料収集」を目的とした国内旅費を見込んでいたが、新型コロナウイルス流行に伴い国内の多くの大学図書館が学外者の利用を制限したため、実施できなかった。そのため旅費7万円を未使用のまま残している。ただし、他の手段によって有用な資料を収集することができ、そうした資料によって研究を進めることができたため、研究の進捗そのものには目立った遅れは生じておらず、全体的には当初計画どおりの進捗状況であると判断できる。 また、研究成果の公表が2020年度中には間に合わなかったが、当初2021年度に計画した論点のいくつか(とりわけ人間と物との相互作用)を部分的に取り入れて論文を作成することとしたことが原因であり、研究の遅れによるものではない。2020年度の研究成果については、当初2021年度に計画した論点を部分的に取り入れて、複数の論文を執筆中であり、2021年度での公表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究成果については、当初2021年度に計画した論点のいくつか(とりわけ人間と物との相互作用)を取り入れて複数の論文を執筆中であり、2021年度に公表する予定である。 また、2020年度に実施できなかった「資料収集」(国内旅費7万円)については、2021年度に実施したいと考えているが、その実施時期については新型コロナウイルス流行の状況によって判断したい。 これとは別に2021年度には、「資料収集ないし研究成果発表」として国内旅費7万円を計上しているが、これについても「資料収集」「研究成果発表」のいずれになるか、またその実施時期については、研究の進捗状況にくわえて、新型コロナウイルス流行の状況によって判断したい。 これ以外については、おおむね計画書に記載された通りの研究をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では、国内の大学図書館での「資料収集」を目的とした国内旅費を見込んでいたが、新型コロナウイルス流行に伴い国内の多くの大学図書館が学外者の利用を制限したため、実施できなかった。そのため旅費7万円を未使用のまま残している。2020年度に実施できなかった「資料収集」については、2021年度に実施したいと考えているが、その実施時期については新型コロナウイルス流行の状況によって判断したい。
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