2022 Fiscal Year Annual Research Report
革命期-1920年代ロシアにおける人間と物との関係の再構築
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20K00474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 正則 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (10346843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロシア / 哲学 / 思想 / 文学 / 科学技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前2年間の研究成果をふまえ、革命期―1920年代ロシアに生じた新たな人間観・世界観を、人と物との関係性の再構築という観点から体系化することを試み、今日的視点からその思想的意義を考察した。 共著書『モダンの身体 マシーン・アート・メディア』(「1920年代ソ連における人間の機械化と反射の理論」を分担執筆)では、ボグダーノフとガスチェフが、表層では見解を異にして対立しながらも、人間と機械をともに「反射」理論の原理にもとづくシステムとみなすことによって、人間と非人間的な物との対立を解消し、両者を同一原理で把握する新たな人間観・世界観を構築しつつあったことを明らかにした。さらにこの新たな視座が、「反射」概念に再解釈をもたらすものであり、21世紀の新たな哲学潮流「思弁的実在論」と共通性を持つことを指摘した。 また、論文「ボグダーノフのプロレタリア芸術理論の変容」では、ボグダーノフの「テクトロギヤ」(無機物、動植物、人間の精神活動、社会を同一原理で把握する統一科学)の構想とプロレタリア芸術理論との関係性、さらにボグダーノフの思想と1920年代の「生産主義」芸術理論との影響関係といった問題を解明することを視野に入れながら、ボグダーノフのプロレタリア芸術理論の変化を実証的に跡付けた。ボグダーノフの芸術理論に1918-1920年に大きな変化が見られ、この変化が、テクトロギヤの芸術理論への導入を意味するものであると同時に、それが(一般的にボグダーノフから影響を受けたとされる)ガスチェフやアルヴァートフからの批判に触発された可能性を指摘した。 このほか、ボグダーノフのテクトロギヤの全体像とその思想的意義、1920年代「生産主義」芸術理論、プラトーノフやピリニャークの文学作品における物と人間の関係性については、それぞれ現在論考を準備しており、2023年度に公表する予定である。
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Research Products
(2 results)