2020 Fiscal Year Research-status Report
文学王国アルゼンチンの成立(1938~76年)-作家と出版社の相互作用の分析
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20K00485
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺尾 隆吉 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80434405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 亮 法政大学, 国際文化学部, 教授 (80328913)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルゼンチン文学 / 出版活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外からの研究資料調達が難しいなか、スペイン語圏の研究者や書店、図書館等の協力を得て、アルゼンチンを中心に、20世紀におけるスペイン語圏各国の出版活動について調査を進めた。特に、メキシコ、ペルー、スペインの事例と比較してみると、20世紀の半ばまでアルゼンチンの出版社がいかに文学作品の刊行に積極的であったか、作家と出版社がいかに緊密な関係を築いていたか、その実態が鮮明に浮かび上がってきた。研究の中心となる二つの出版社、スダメリカナ社とロサダ社に関しては、作家の日記、研究書、論文等の解読から、その歴史とカタログ、発行部数ほか、研究の基礎となる情報をかなりの程度まで把握することができたものの、販売戦略や作品の選定、作家たちとのやり取りについてはまだ十分な調査を進めることができていない。 並行して対象作品の書誌情報収集や具体的なテクスト分析やも進めており、2020年度は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ・カサーレス、シルビナ・オカンポを中心に調査を進めた。大西亮は、ビオイ・カサーレス『英雄たちの夢』の邦訳を終え(水声社より2021年4月に刊行)、書誌情報等を踏まえた「訳者あとがき」に研究成果の一端をまとめた。寺尾隆吉は、シルビナ・オカンポ短編集の邦訳を完了し(幻戯書房より2021年11月刊行予定)、これまでの研究成果の一部を「解説」に盛り込むために準備を進めている。 この間、メキシコ文学を専攻する藤井健太朗とキューバ文学を先行する山辺弦氏(東京経済大学准教授)と二度研究会を行い、各国の出版活動について情報を交換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため予定していた現地調査を実施することができず、出版社について現地の関係者や文学研究者から直接情報を得ることができなかった。日本国内にとどまりながら資料を探すことは困難であり、本研究に必須と思わる論文や書籍の一部がまだ入手できていない。 また、東京都内で少人数(四人以内)による研究会を実施したり、都外に住む研究者とズームによる情報交換を行ったりはできたものの、研究の内容について多くの専門家と意見交換を行うことはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
20世紀アルゼンチンにおける出版活動の実態について、書籍・論文等で調査を進めながら、対象としている10作品の書誌情報を把握し、テクスト分析に活かしていく。 現地ブエノスアイレスにおける調査や資料収集はなんとしても必要であり、2022年3月の渡航に向けて、アルゼンチン人研究者や現地日本大使館と連絡を取りながら準備を進めていく。2021年10月頃には、ボルヘス、ビオイ、オカンポに関する研究成果をシンポジウムのような形で発表する予定。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していたブエノスアイレス渡航ができず、現地でスタッフを雇うこともできなかった。2022年3月は、当初の予定より長くブエノスアイレスに滞在して、徹底した資料収集と現地調査を行う予定。
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[Book] 英雄たちの夢2021
Author(s)
アドルフォ・ビオイ・カサーレス(大西亮訳)
Total Pages
296
Publisher
水声社
ISBN
978-4-8010-0573-0