2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00490
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大森 雅子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90749152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソ連文化 / ロシア文化 / ロシア文学 / 児童文学 / 児童雑誌 / メディア文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1924年に就学前の子供のために刊行された児童雑誌『ムルズィルカ』に関する研究を中心的に進め、1920年代の代表的な大人向け風刺雑誌『鰐』における「敵」表象と比較しながら、同時代の『ムルズィルカ』の中で提示された「敵」のイメージの特徴について分析した。1920年代の『ムルズィルカ』と『鰐』では、ソ連国内の「敵」が多く扱われている点が共通しているものの、「敵」の表象においては相違点が認められ、それらは読者層に合わせたユーモアの在り方やイデオロギーの力点の違いに起因していることを明らかにした。この研究成果については、2022年2月5日にZoomで開催されたモスクワ大学ジャーナリズム学部の国際学会で報告した。現在は、この学会発表で得られたロシアの研究者からの助言を活かして、論文を執筆中である。 また、本研究課題と同時に行っている、朝日会館子供企画研究会の共同研究の一環として、1920年代から30年代ソ連の児童文学が同時代の日本でいかに受容されたかという問題について、ソ連の児童雑誌研究の見地からも考察を深め、2021年8月14日にZoomで開催された第6回ジャーナリズム研究会において報告を行った。その後、報告内容を基に論文を完成させ、『EAA Booklet』の第27号に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も、新型コロナウイルスの影響で、当初予定していたロシアの図書館での資料収集ができなかった。本研究の分析対象であるソ連の児童雑誌は、インターネットで公開されているものが徐々に増えてきているが、ロシアの図書館でしか閲覧できないバックナンバーが相変わらず多いため、ソ連時代の主要な児童雑誌をくまなく閲覧した上で、「敵」の表象の変遷を時代ごとに整理する作業が滞っている。現在は、昨年度に引き続き、バックナンバーが比較的多くインターネットで公開されている『ムルズィルカ』(1924-)を主な分析対象に定め、独ソ戦期(1941-45)及び戦後の児童雑誌やその他のメディアにおいて「公式的」な「敵」のイメージがどのように再生産され、継承されているかという問題について考察を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻の影響で、ロシアの渡航情報が渡航中止勧告のレベルに引き上げられ、現地への渡航の見通しが不透明になった。次年度中に渡航が可能になれば、現地で児童雑誌に関する資料収集を行いたいと考えているが、当分の間はインターネットで閲覧できる資料を用いて、研究を進めていく予定である。折しも昨年の2021年に、帝政ロシア末期からソ連時代を経て現代に至るまでに刊行された児童雑誌の図版集(4巻本)が初めて出版されたことで、大まかではあるが、ソ連時代の児童雑誌の全容を把握しつつある。次年度は、こうした資料も活用して、研究の迅速化を図りつつ、特にスターリン末期からペレストロイカ期までに刊行された児童雑誌の分析も視野に入れて、研究に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
本年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、9月に計画していたロシアでの現地調査を断念したため、次年度使用額が生じた。ロシアのウクライナ侵攻によって、次年度も当分の間はロシアへの出張が難しくなることが予想されるが、渡航が可能になれば、現地でソ連の児童雑誌に関する資料収集を行いたいと考えている。現地調査が引き続き難しい場合は、書籍とパソコンの購入費用に充てたい。
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Research Products
(3 results)