2020 Fiscal Year Research-status Report
ゴルドーニの演劇作品およびオペラ台本に見られる伝統と革新
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20K00493
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴルドーニ / 演劇 / オペラ台本 / イタリア / 18世紀 / 伝統 / 革新 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性 ―ゴルドーニによるマルテッリアーノ使用をめぐって」を、6月刊行の共著論文集『演劇と音楽』(森話社)にて発表した。この論文では、18世紀、P.J.マルテッロが復活させた7音節詩行2つの組み合わせによる14音節詩行マルテッリアーノの音楽性が、ゴルドーニがその詩形を用いた悲喜劇『ペルシャの花嫁』で18世紀のヴェネツィアにおける最大の成功を収めることとなった理由の一つとして挙げられることを指摘した。ゴルドーニはオペラ台本作家としても名高いが、そのオペラ台本ではなく、台詞劇の持つ音楽性について、上演との関連から指摘した研究は新しいものと思われる。同論文の内容については、8月の西洋比較演劇研究会の「シンポジウム『演劇と音楽』:研究手法の視点から」においても発表を行った。発表では「1.マルテッロがどのようにしてマルテッリアーノという詩形を提唱するに至ったか。また、マルテッリアーノとはどのような詩形か 2.ゴルドーニによるマルテッリアーノ使用のきっかけ 3.マルテッリアーノは何故ヴェネツィアの観客に好まれたのか、またゴルドーニにとってマルテッリアーノ使用の意義は何だったのか」という3点を中心に、劇の詩形と上演について論じたが、演劇作品を論じる際には、台詞の内容だけでなく、言語や文体といった形式や、どのような上演(時代、国、歳、劇場、役者、観客)を想定して書かれたか、音声面を含めて検討していくことが、研究手法の視点から見て重要であり、必要とされる点も指摘した。このゴルドーニ劇の上演研究を通して得られた知見は、早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点の特別研究2共同研究「COVID-19影響下の舞台芸術と文化政策――欧米圏の場合」(研究代表者:伊藤愉)におけるイタリアの舞台芸術状況についての発表や報告書作成にも資するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴルドーニの台詞劇上演において韻文が果たした機能についての論文を公開できた。ゴルドーニの韻文劇は、ヴェネツィアというオペラ都市とゴルドーニ演劇の結びつきを考察する上でも重要な論点となる。この論文をめぐり、「シンポジウム『演劇と音楽』:研究手法の視点から」で他の発表者や参加者を交えた討論を行ったことで、イタリア韻文劇の持つ「音楽性」と同時に、その音楽性からの脱却を図った後代の作家の韻文劇へと視界が開かれた。また本来6月に発表予定であった日本18世紀学会のパネル「公共空間と演劇」(新型コロナウイルス蔓延のためパネルは中止)のためにゴルドーニとヴェネツィアの劇場の関係について調査を進めたことで、ゴルドーニの演劇やオペラ台本の上演事情への理解が深まった。この18世紀の上演事情の知見は、日頃ゴルドーニ作品の上演が行われている現代イタリアの舞台芸術を考える上でも重要で、共同研究「COVID-19影響下の舞台芸術と文化政策 欧米圏の場合」にてイタリアのケースについての研究発表を行い、報告書を作成する上でも役だった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本18世紀学会のパネル「公共空間と演劇」のために行った、ゴルドーニとヴェネツィアの劇場の関係について調査を論文化したものを、学会誌にて発表予定である。また、2019年にInternational Congress on the Enlightenment にて「Rethinking Goldoni’s tragicomedy La sposa persiana through comparison with past Venetian theater works」のタイトルで行った口頭発表の内容の論文化を目指す。その研究の延長で、ゴルドーニを含む18世紀の演劇作品やオペラ台本に見られる異郷の表象についても調査を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延で学会発表や海外での調査が中止となり、旅費がなくなったため。2021年度の学会出張費として使用予定である。
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Research Products
(6 results)